町屋へ行こう

翌日の朝6時。暑苦しい蝉の鳴き声とともに隣の部屋から暑苦しい物音が聞こえてきた。あーうるせ。


「よし、準備は万端だ」


思わず部屋から顔を出す。


「ねぇ、どっか行くの?こんなに早くに?」


「決まっているだろう。お清さんの為に今日は町屋へ向かう」


あ~話もあったね。...相談されてねーけど。


「お前も今日は学校、休みだろう?」


果てしなく嫌な予感がする。


「来い、道案内をしてやる!」


有り難迷惑な話だ。それになんでこんな朝っぱらから...俺はあくびをしながらベッドへと戻りタオルケットを頭から被った。


「準備が出来たら下へ来い。待ってるぞ」


そう言うと元気な声で下へ降りていった。朝からご苦労様です。まったくこんな時間から何処かへ行くなんて、しかもよく分からない場所だし。でも、兄貴と清ちゃんの2人だけだとな...兄貴の暴走を止められる人間はいない!


俺はカッと目を見開き覚醒する。このまま家にいては心配だ!(主に警察沙汰にならないかと)そしてリビングへと降りたった。


「起きたか、待ってたぞ」


「いや、待たれても困るんだよね。で、朝飯は?」


「牛丼だ!」


「それは嫌だ。なんかトーストでも食べるよ。あ、清ちゃんの分もいる?」


声高らかに宣言する兄貴をスルーしてその後ろにいる女の子へ言葉を投げた。


「... と、とー」


ダメだ。取りあえず食べさせてから感想を聞こう。意外とホットプレスって美味いんだ、時間は掛かるけど。


「どうした?肉、使うか?」


「いや、遠慮しておく。ベーコンとかを使うから」


トマトを切り、レタスを挟む。ベーコンとマヨネーズケチャップを少々。そしてプレス機に挟む。


「2分ほど待ってて、じきに焼けてくるからさ」


そう言うと洗面所で顔を洗いに行った。いつもだいたいこのくらいの時間で支度は出来るからね。身体が覚えてらっ!って言いたいけど格好がつかないからやめとこうか。パンの焼ける匂いと野菜の香ばしい香りがする。ああ、腹が減る匂いだ...


「さってと、出来たかな~?」


プレートを開けると焦げ目のついたパンと野菜の香ばしい匂い。それを半分に切り分け


「はいどうぞ。俺謹製ホットプレスサンド」


清ちゃんの目の前に差し出した。


「え...あの...その、いいんですか」


「いいも何も清ちゃんの為に作ったんだからさ。せっかくだから食べてみてよ。美味いぞ~」


ちらりと見るととても嬉しそうな顔をしている。これならば作った甲斐がある。


「お箸...はありますか?」


「パンを箸で食べる人は見たことないなぁ」


「握り飯の要領で手でつかんで食べればいい」


ほー、なかなか悪戦苦闘してらっしゃる。まぁそのうち慣れるでしょ。あとは自分の分を焼くとするかな。

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