宗吾には行けたら行くとだけ伝えておいた。今のところその日に予定は入っていないのだが、『怪奇現象探索同好会』の活動にはついて行けないと思っていたりする。だが、一方でこんな途中で辞めるのもなんだかなぁ...って気もしたり。


サークルのみんなの事は嫌いでは無いし、一緒に居たからって不快な人も居ない...と思う。それに家に居たってゴロゴロしながら夏を過ごすだけだし。


「やっぱり...行こうかな...」


ボソっと呟く。やっぱり夏はスイカとかき氷。確か栃木はおいしいスイカが獲れるところだし、行こう!

心の中のもやが晴れていく。おぉ...俺は何に悩んでいたんだろう?


午後の授業を無事に受け、クリアな脳みそに教授の言葉が入って行く!このままでは脳内が全て法律で埋まって行くに違いない!今日覚えたなんとかの法律やかんとかの法律が実際に使える日が来るかもしれない!


俺は足早に帰宅した。サークル関係はあとでメールでもしておこう。


「ただいま〜っと...」


兄貴は、まだ帰っていないみたいだな。彼女はもしかしたら自力で帰ったのかな?と思いつつリビングへ戻ると彼女は...え?


「何してるの?」


「.........」


バケツをひっくり返したようにキッチンが水びたし。あと、冷蔵庫の前にずぶ濡れの彼女がへたり込んでいた。


「...何があったの?」


「......あれ...」


彼女が指差す方向を見ると蛇口のレバーがあった。蛇口のレバー...?どこの家にもある、下げると水が出て、上げると水が止まる、キッチンにはありきたりの道具だ。


「えーっと...水がどうかしたの?」


「...私、お水を汲もうと思って...あなたがあの井戸からお水を汲んでいたから...そうしたら、お水が跳ねて...」


シンクの中にはおたまが落ちていた。ああ、引っ掛けて落としたんだな。俺はレバーを軽く下げるとおたまに跳ねた水がキッチン方向へ飛んで行く。俺のシャツにも跳ねて来た。


「なるほど...」


今日の俺は冴えている。なんちゃらの法律のおかげかもしんない。


「つまり君はこの水が跳ねて水浸しになったと言いたいのかな?」


コクコクとうなずく水浸しの彼女。夏とはいえ、このまま放っておく訳にはいかない。


「良かったら、シャワーを浴びてきなよ。着替えなら、俺の昔の服でも貸すからさ!」


目を丸くする彼女の手を引き、風呂場へ連れて行った。


「着替えは外に置いておくから。あと、これタオル」


強引に扉を閉める。さて...と。兄貴が帰ってくるまでには綺麗に拭いておかないとな。俺は物置からモップと雑巾を持って来た。この際だから、ちょっと念入りに掃除しようっと。

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