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翌朝、起きるとまだ暑いまんまだった。そう簡単に夏が終わるはずない...なんてったってまだ7月の終わりなんだから。あ〜今日も暑い1日が始まる。
「あ〜...おはよう」
「おう!」
変なかけ声にも慣れた。兄貴は新聞を読みながら野菜ジュースを飲んでいる。
「そう言えば、あの白い人ってどうなった?」
「ん?さっきまでそこに居たと思ったんだが...」
キョロキョロと辺りを見回すと、あぁ...そこに居たのか。ソファーの陰にポツンと体操座りをしている。まるで鍵っ子の様だった。
「どうしたの朝ごはん食べないの?」
「......」
フルフルと左右に首を力なく振る。う〜ん、このまま何も食べさせないのも悪い気がするなぁ。
「兄貴は何を食ってんの?」
「俺はこれだ!」
兄貴は朝からササミと玄米とサラダを食べている。察するにこれを彼女にも勧めたのか?
「いや...普通にパンとか無いの?」
「冷蔵庫に入ってるんじゃないのか?」
これなら食べるかな?ん?なんだか子犬を拾って来たみたいになってるぞ...
「ねぇ...パンとお米ならどっちが食べたい?」
「......」
相変わらず返事は無いみたいだ。あれー?嫌われちゃったか?でも暑いから何かしら食わないとバテるかもしれないからな。
「じゃあお米でいい?普通の白米なら食べられるでしょ?」
「......!」
一瞬の反応を俺は見逃さなかった。ならご飯をレンジで温めるとあ〜ら不思議。ほっかほかに炊けてやがるっっ......!
馬鹿な事をしてる場合じゃないや。みそ汁も温め直して、目玉焼きならとりあえずはOKかな。
「はい、これどうぞ」
彼女の近くのちゃぶ台に温め直した白米、みそ汁そして...目玉焼きをサービスで作ってあげた。
「......」
心なしかさっきより表情が明るい気がする。
「いいよ、食べて」
遠慮がちに手が伸びる。透き通る様な白い腕が茶碗を掴んだ。そして一口。
「.........おいしい」
消える様なか細い声だったが、はっきりとそう聞こえてきた。よしよし、これで少しは会話が出来る様になるだろう。
「そうか、旨いか良かったな、さぁどんどん食え!」
「兄貴、うるさい」
彼女はゆっくりとだが少しずつご飯を食べ、ついには完食したのであった。めでたし...めで...じゃ、なくって!
「じゃあ、君を送って行くよ」
この子を家に帰す時が来たようだ。まぁ、親御さんには上手い説明をすれば納得してもらえるだろ。そんな安易な考えで、俺は立ち上がった。
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