3
「兄貴...!」
いいところで邪魔が入った。兄貴は無駄に健康にうるさい。健康志向という訳ではないんだろうが、何を目指しているのか分からないくせにしっかりしている。
「それより、何でこんな夏に暑苦しい筋トレなんかしてんだよ!」
思わず文句が出る。
「ん?日常生活に欠かせない事だからな...お前は飯を食わずに生活出来るか?」
「それは出来ないけど...」
「だろう?やはり筋トレは必須だ。どうだ?お前も久しぶりに...」
「嫌だよ、それより...ああ、プロテインだな」
長く一緒に暮らして居れば分かる事も多い。筋トレ終了という事は冷蔵庫のプロテインを飲みに来たんだろうと言う事は言うまでもない。
「うむ。旨いぞ、ピーチ味」
何か1人で自画自賛している。まぁいいやあれは。放っとこう。で続きはと...
「..........」
「あれ?」
そういや気がつかなかったなぁ...3Dハイレゾの進化がここまで来ているなんて......目下現れた白装束の女性は。床に突っ伏したままこちらへ視線を移した。目が赤く充血していて、身体が濡れている以外は特に変わった様子は無い。
「兄貴、いつ新しいテレビ買ったんだ?しかも3D対応なんて高いやつ」
「いや、俺は買った覚えは無いが...」
残りのプロテインを飲み干しながらそう言った。
「あれ?じゃあここに居るのは?」
「恨み...忘れぬ...呪ってやる...」
物騒な事を言ってるけど、この状況下では恐怖というよりは興味の方が湧いて来た。
「ねぇ?君ってどこから来たの?俺がさっき見ていたDVDの人と同じ格好をしているけど...」
「.........」
あれ通じなかったかな?
「どこから来たの?」
「......町屋」
「兄貴、町屋って?」
「東京都荒川区の町屋か?そこそこ遠い場所から来たな...」
「......」
「じゃあ家出かな?」
「おそらくな。今日はもう遅い、明日...いやもう今日か。詳しい話はその時に聞く事にしよう」
確かに、こんな夜中に外に放りだすのも可哀想だし、もう夜も遅いから今晩は泊めてあげようかな。
「タオル貸すからさ、身体拭いて来なよ、俺たちの後で嫌じゃなかったら風呂もどうぞ」
そう言って俺は部屋へ戻った。すると、高橋から1通のメールが。
『悪い、あのDVD中身、間違えて違うの渡しちまった。あれはエラーが入ってて見られないやつだから、今度正しいの持って行くから』
やっぱりアホだな、あいつ。ちゃんと見られたから大丈夫なのに。あれだな、中身を確認しないで返すタイプだなあいつは。
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