風邪3

疲れて泥のように眠る時以外で

一人きりになったのは、

酷く久しぶりのような気がした。



心細かったうえに

時間も持て余していたので、

私はタカユキにLINEしてみた。




『風邪ひいちゃったー

 久々すぎてしんどいし心細い;_;』




そのときタカユキが

何をしていたのかは知らない。



でも、いつもならすぐに返ってくるLINEが、

この日に限っては

翌日の昼間になっても

放置されたままだった。

いつの間にか、既読はついていたけど。



なんとか病院には行って、

風邪ではなく溶連菌だと診断された私は、

回復するまでは必ず安静にするようにと言われ、

バイトを1週間弱休むことにした。



身体のダルさもしんどいけど、

タカユキから反応がないことも

気になっていた。



そして、

LINEの新着通知がきたとき、

私は目を疑ってしまう。






『なにやってんの?』






タカユキからの返事は

ただそれだけだった。



タカユキの目に、

私はどんな風に映っていたんだろう。



冗談めかしく

「心配してよー!」と

言う気にもならず、

とりあえず病状を報告した。



『溶連菌とかいうやつだった。

 ノド荒れすぎて膿んでるらしい…

 痛すぎてびっくりした(;_;)』



実際、ツバを飲み込むだけでも激痛が走ったし、

ノドの奥に膿が溜まる

不快感も多分にあった。



だけどタカユキは、

そんな言葉も一蹴した。






『大げさだから(笑)

 それ理由に男呼ばないでね?』






その後もタカユキとやり取りを

続けたかは定かじゃないけど、

“大丈夫?”なんて言葉が

吐き出されることはなかった。






この時、思い出した。






前にもこんなことあったな、と。




どう定義付けたら良いのか分からないけど、

タカユキとは、

相容れない部分があるって

あの頃も確かに感じていた。



しかもそれは、

仲良くなればなるほど

顕著になっていって。



何年も経った今だから、

懐かしさが勝って

忘れてしまっていたけど…

タカユキに優しさを

期待した私が間違いだった。



だって、何も問題がなければ

音信不通になんて

そもそもなっていなかったはず。




そんなことを今さら

思っても、もう遅い。



タカユキとの幸せを夢見た私は、

しゅんくんの気持ちと告白を

既に無下にしてしまったのだ。

…罰が当たったのか。




気持ちに比例して、

身体もベッドに沈んでいく。



いっぱい寝て、

早く元気になろう。

こちらから甘えたりしなければ、

タカユキの言動なんて

きっと気にならないはず。



そうやって目を閉じたところで、

眠気なんてやってこない。



ふと、床に投げ捨てた携帯が

微かに震え、

着信を知らせていることに気付く。




相手は、しゅんくんだった。

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