風邪1

翌朝。

予定がなくて良かったけど、

目はこれでもかと腫れていた。



瞼の重みから、

たっぷり泣いた

深夜の出来事を思い出す。



そして、しゅんくんからの

長文メールに

返信していないことに気付いた。



…もう返すべきじゃないか



そんな想いもあったけど、

あんなメールをもらってしまったら、

しゅんくんとの縁を

完全に切るなんて、無理だと思った。




時間をかけて、

私も長文のメールを綴った。



優しくしてくれてありがとうとか、

会えて良かったとか、

自分勝手でごめんなさいとか。

何度も読み返してから、送信。



しゅんくんから返事がきたのは、

バイトあがりだったのか、

また深夜だった。



今度はしゅんくんから

「メールありがと。電話いい?」

と誘われる。

躊躇う気持ちもあったけど、

私はしゅんくんからのコールを受けた。






「もう連絡取れないと思った」






「もしもし」に続く

しゅんくんの第一声はそれで、



「ちょっと考えてたよ」



と告げると、しゅんくんは

「冬子さんドライすぎるー」

と言って笑った。

思っていたよりも遥かに

穏やかな空気が流れていた。



私たちの結論は、

友だちになろう。と言うか、

友だちでいよう。だった。



「友だちって言っても、

 セックスフレンドって意味じゃないよ?

 飲み友だちみたいな感じかなー」



しゅんくんからの提案に、

私も頷いた。



“友だち”という言葉を聞いて、

しゅんくんとの縁を

切らずに済んで良かったと

安堵してしまう。



でも、しゅんくんの優しさを

無意味なものにしたくはない。

だからこそ、タカユキとも

真剣に向き合おうと決意した。



しゅんくんとの

通話を切った直後に、

私はあることを思い出して

早々にメールを入れた。



『電話ありがと。

 しゅんくんLINEは?』


『こっちこそありがとう(´ω`*)

 聞いたことあるけどやってない!』



便利だよーと返信すると、

そのままメールは止まった。




次に私は、

タカユキに電話をかけた。




「もしもし?


 私…けじめつけたよ」




皆まで言わずとも、

電話の向こうのタカユキには

しっかり伝わったようだった。



「…まじ? 行動早すぎ(笑)

 でも、また捨てられなくてよかったー」


「またも何も、

 捨てたことないから(笑)」



タカユキの声は弾んでいて、

私が幸せになるべき相手は

タカユキなんだと、再度認識する。



ただ、この日もタカユキから

“付き合おう”

みたいな言葉は出なかった。

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