決別2
「…ごめんなさい」
一呼吸おいて、私は言葉を続ける。
「好きな人いるんだ。
でも、しゅんくんのことも大切だから…
これ以上中途半端にできない。
好きって言ってくれて、ありがとう。
ビックリしたけど…嬉しかった。
ずるくてごめんなさい。
今までたくさんありがと、なのに…
ごめんなさい」
言い切ったときには
涙が止まらなくなっていて、
しゅんくんにも聞こえてしまう
レベルでしゃくりあげていた。
タカユキを選ぶんだと決めていたのに、
それを伝えることが
こんなにも悲しくて
胸が痛むとは思わなかった。
「冬子さん、泣かないで」
沈黙を守っていたしゅんくんが、
いつもと変わらない優しい声で、
私の名を呼ぶ。
「気持ち、教えてくれてありがとう」
穏やかすぎるその声に、
彼の優しさとか人柄とか思いやりとか、
いろんなものを感じてしまって
また涙が込み上げる。
そして、しゅんくんは
子どもをあやすみたいに
ゆっくりと語りだす。
「ねえ、冬子さんは
何も悪いことしてないよ。
悪いのは、バカでタイミングの悪い俺。
もともと他が居るのは分かってたよ。
でも、“分担制”って話聞いたときに、
すごい嫉妬した。本当に別の男居るんだって。
好きだって自覚は前からあったのに、
その話聞くまでのんびりしてた俺が悪い。
だからこの前も、あんなところで
告白しちゃって…ごめん。
冬子さん、泣かないで」
言葉一つ一つの温もりが、
そのまましゅんくんの温かさだと思った。
「とーこさんは優しいね。
だからこうやって
泣いちゃうんだろうけど。
でも、泣いてるのは嫌。
俺は平気だから、泣かないでほしい」
彼の言葉の魔法が効いたのか、
私の呼吸は少しずつ
落ち着きを取り戻していく。
「とりあえず、
今日は遅いからもう寝ようか」
「おやすみ、良い夢見てね」
という言葉で、
しゅんくんとの通話を終えた。
だけど、
部屋が再び静かになると
涙がこみあげてくる。
“もう会えなくなる”
自分で決断したはずなのに、
そう思えば思うほど涙は止まらなくて。
泣き止んだ頃に、
携帯の画面が新着メールを
知らせていることに気付いた。
画面をタッチして内容を確認した瞬間、
私は再び――
今度は声を上げて泣いてしまった。
「冬子さんありがとう。
電話できて良かったし、
変な意地張らずに言いたいこと言えて良かった。
俺にとっての冬子さんは、とにかく真面目!
人の気持ちを考えられるし、気も遣える、
俺なんかよりすごく優しくて良い子だよ。
自分で言うのもあれだけど…
人の好き嫌い激しいオレが
良い子って思うんだから間違いない!!
だから泣くなー!
泣かなきゃいけないような事、
冬子さんはしてないし俺もされてないよ。
だから自分を気に病む必要は無いし、
冬子さんは冬子さんでいーの。
疲れただろうから、
今日はゆっくり寝てください。
おやすみ。良い夢みてね」
私の選択は――正解だった?
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