決別1
私は、迷っていたわけではなく、
ただ悩んでいた。
告白されてもなお、私は
「付き合うならタカユキ」
ということしか、頭になかったのだ。
告白が嫌だったわけではない。
でも、しゅんくんの気持ちを知ったからには、
中途半端に付き合い続けてはいけない気がした。
でも、
縁を切りたいわけではなくて。
自問自答しながら、
何度も「でも、でも」と繰り返す。
――答えが出ない。
思いたって、
タカユキにLINEしてみた。
『告られちゃった』
タカユキにもしゅんくんにも
悪い気がしたけど、
一人で考えていてもラチがあかないから
タカユキの反応が知りたかった。
『え、誰に?』
そんなLINEがきたと思ったら、
続け様に着信。
相手はもちろん、タカユキ。
「とーこは、
また俺のになってくれないの?」
笑っていたけど、
ちょっぴり拗ねたその口調が
無性に可愛い。
そして、浅はかな自分が恥ずかしくなる。
「んーん、大丈夫」
「相手は?」
「あー…仲良い子」
「男でしょ?」
「うん、セフレ…みたいな」
「冗談でしょ?」「冗談だよー」
くらいで流されると思っていた私は、
タカユキからそんなことまで
聞かれたのが予想外で慌ててしまう。
タカユキはタカユキで、
「会ってない期間長過ぎたし
文句言う筋合いもないんだけどさー」
と、言っていたけど。
「…連絡取ったらダメだよ?
俺もうすぐ都内行くつもりなんだし、
ちゃんと待っててね」
柔らかいその言葉に、
少しだけ
柔らかくない何かを感じた。
その感覚に急かされて、
私は決意を固めた。
告白の翌日、
日中の間に「今夜電話したい」と
しゅんくんに伝え、それを実行した。
「もしもし?」
特に緊張してる風でも、
嬉しそうでも悲しそうでもない
いつも通りのしゅんくんの声。
でも私はすでに、
涙が出そうだったのを覚えている。
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