御祭2
24時間営業している安い居酒屋に入り、
ビールとカクテルで乾杯。
軽くツマミをつつく。
時間帯のせいか酉の市のせいなのか、
店内にいる客は私たちだけだった。
「ほんと寒かったねー」
「真冬並だね」
という会話をきっかけにして、
しゅんくんも私も
雪が降る地方の出身だと判明した。
だからと言って、
寒さに強いわけじゃないよねと
二人で笑い合う。
「クリスマスの予定は?」
どちらからともなく、
不意にそんな話題が出た。
しゅんくんは、イブはバイトで
クリスマスとその翌日は
大阪まで競艇を見に行くと言う。
ギャンブル好きなの?と聞けば、
パチンコもスロットも大好きで
競艇はバイト仲間に誘われ、
興味本位でと話していた。
「私、麻雀なら好き」
少しだけ雀荘で働いてたんだーと話すと、
しゅんくんは麻雀もできるらしく
今度メンツを集めてやろうと
嬉しそうに笑ってくれた。
私のクリスマスは…
タカユキと過ごすつもりとは、
なんだか言えなかった。
あと2時間もすれば始発が走り出す。
しかし、酔いがまわってきて、
少しずつ眠気に支配される。
「冬子さん、真っ赤(笑)
相変わらずお酒弱いね」
と、しゅんくんにからかわれても、
言い返す気力が起きない。
今からホテル? 漫喫?
うーん。
あんまり気が乗らない…。
時間帯も微妙すぎるし、
満室とか満席だったら面倒。
いっそのこと、うちに帰りたい。
「うち行かない?」
その言葉をしゅんくんに投げたのは、
実は初めてだった。
少し驚かれたけど、彼は静かに微笑んで
「そろそろお会計しよっか」と
店員を呼んだ。
タクシーに乗り込んで
うちに着くまでの時間は、あっという間だった。
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