葛藤2




「しゅんくん、酉の市行かない?」




昨日、職場に向かう途中で

チラシを見かけた。

唐突に切り出してみたけど、

しゅんくんは酉の市を知らなかった。



私も去年知ったばかりだったけど、

楽しかったのを覚えている。

毎年11月に新宿で行われるお祭り。



夜店いっぱい出るし

人がたくさん集まるし、

何より新宿のど真ん中で祭って

だけで楽しそうじゃない?



そうやって話すと、しゅんくんも

「行ってみたい」と答えてくれた。

そして、私たちは11月末の

三の酉に行く約束をした。




こうやって書いていくと、

しゅんくんと良い雰囲気! 幸せー!

と、自分でも思えてしまうけど、

実際はそうでもなかった。



タカユキとのやりとりの詳細を

覚えてはいないだけで、

私の気持ちはまだタカユキにあった。



十代の頃、恋してた相手だし

再会を願ったことも何度だってあった。

単に恋心がよみがえっただけでなく、

運命も感じていた。




しゅんくんだって嫌いではなかった。

むしろ、ときめくことも多かった。



だけど、やはり私の中では、

彼女の存在を隠されていたことが

なんだかんだ大きくて。



嘘つき=深くは信じない相手と

思い込むことによって、

良い距離感を保っていられたんだと思う。




タカユキと付き合うまでは

仲良くしてても良いよね。



とか、



仮に付き合ったとしても、

しゅんくんはペットみたいな

存在だしアリだよね?



とか、最低なことばかり考えていた。

そんなことを考えては、

葛藤してばかり。






そんな私に決断させたのも、

やっぱりしゅんくんだった。

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