浴室1

どんな流れで

ホテルへ行ったのかは

もう覚えてない。



ただ、ものすごい土砂降りに襲われて

2人して駅からホテルまで

猛ダッシュした記憶はある。



久しぶりに会ったのに

ついてないねーなんて

しゅんくんと笑い合いながら。



鍵を受け取って部屋に入ると、

一気に全身の力が抜けた。

しゅんくんに対して緊張とかは

もうなかったけど、

ヒールで走ったせいか

足も身体もなんだかだるい。



そして、自分たちが

ずぶ濡れなことを思い出す。



「風邪ひいちゃうね」



そう言って、私はお湯を

溜めるべくバスルームへ向かう。

不快感を感じるほど

服も髪も濡れてたし、

冷えた身体を温めたい。



脱衣所でバスタオルを

見つけたので、

しゅんくんの分も持っていく。



手渡すと「ありがとう」と言った割に、

彼はそのバスタオルを

使おうとしなかった。



「しゅんくん先いく?

 私時間かかると思うし」



話題をシャワーに

切り替えたけど、

今度は返事すら返ってこない。



私は濡れた頭を拭きながら、

ガラステーブルのわきの

ソファに座って

テレビのリモコンに手をのばす。



久しぶりだしこんなもんか。



とか、



シャワー浴びたいけど

スッピンはやだなぁ…



とか、そんなことを思いながら

テレビをつけようたしたときだった。

沈黙を破ったのは、しゅんくん。






「冬子さんと入る」






え?



全く予想していなかった展開。

誰かとお風呂に入るなんて

何年ぶりだろ…。



初カレと入ったときは、

湯船の狭さにイライラして

けんかしてしまった気がする。



恋人ですらそうだったのに、

久しぶりに会った

セフレと入るなんて、

絶対むりだと思った。




「…なんで?」


「一人より楽しいから!

 せっかく二人で居るんだし」


「え、楽しめる自信が…」



そうは言いながらも、

ニコニコと微笑むしゅんくんの

ペースにのまれそうだ。



「それに、一緒に入ると

 いつもより素直に話せそうだと思って」



うーん…。

まぁ、

ラブホの湯船は…広いよね。



ね、と後押しするしゅんくんに

私は「わかったよ」と告げた。

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