再会
「タカ…ユキ……」
ユキと名乗ったその男は、
私が10代の頃にこのサイトで知り合った
"タカユキ"だった。
眼鏡をしていても、
そのチワワのように愛くるしく
大きな瞳は変わらなかった。
タカユキは1つ年上で、
知り合った当初は専門学生。
偶然にも、
学校の最寄り駅が同じだった。
それだけの理由で
覚えているわけじゃない。
私は、彼に惚れていた。
紳士的な優しさも、
時折かもし出される
ミステリアスな雰囲気も、
子犬のような顔で拗ねる姿も、
アニメを見たり
ゲームをして過ごす時間も、
彼とするセックスも。
全てに満たされ、
一緒に居られるだけで
幸せすら感じていた。
身体の相性も抜群に良かった。
しかし、その当時の私は
あのDV男と付き合っていた。
そのことは伝えていたし、
タカユキも割り切っていた。
仲は良かったつもりだけど、
タカユキから愛されている…
みたいな実感はなかった。
その態度で、
いつも自分の立場を
思い知ることができた。
だから私も、
好きとか言ったらダメだと
何度も葛藤していたけど…
私たちが疎遠になったのは、
何故だっけ?
「“もしもし”って言った声で、
すぐ冬子だって分かったよ」
2人きりでゆっくり話したいし、
時間も時間だから…
ということでホテルに来た。
私はソファ、タカユキはベッドの上。
「私も顔見たら分かったー!
今でもあのサイト見てるって
お互いダメ人間すぎる…」
「俺は久しぶりだけどねー
冬子は相変わらず遊び人?」
「え、今も昔も完全に遊ばれ人だよ(笑)」
ああ、あの頃もこんな感じ
だったなーと懐かしくなる。
会ってない期間が嘘みたいだ。
「なんで連絡取らなくなったんだろ?」
ふと、先ほど浮かんだ疑問を
タカユキにも投げてみる。
どちらからともなく
連絡を絶った気がするけど、
きっかけは何だったっけ。
「んーなんでだろ」
「私が切られた気がする(笑)」
「それはない。
冬子が先に学校卒業して、
なんか疎遠になったよね」
「卒業してからも一回会ったじゃん。
そのとき、彼女できたって…」
そうだ、
タカユキに彼女ができたのを
聞かされて…連絡を絶ったのだ。
その頃にはタカユキの態度も
素っ気なくなっていたし、
連絡がくることもなかった。
関係を切られたのは、
やっぱり私の方。
「誰かさんに、彼氏がいたからだよ」
私の言葉を遮って、
タカユキはそう言った。
大きな二つの目で
こちらを見据えながら。
「彼氏は最初から居たじゃん。
タカユキだって、ペアリング
つけててラブラブそうで…」
最後に会った日、
タカユキは左手に指輪をしてた。
茶化すように尋ねたら、
ペアリングだと肯定されて…
「俺は、
冬子と付き合いたかったよ」
それは、あの頃心のどこかで
望んでいた言葉。
それでいて、絶対にあり得ないと
分かっていた言葉。
タカユキから愛されてるとか
好かれてるとか、
そういう感情を感じたことは
一度もなかったから。
「おいで」
伸ばされたその腕を
拒むなんて、できなかった。
腕と腕が絡んだ瞬間
押し倒され、
二人でベッドに沈みこんだ。
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