事件

でも、年が明けた二月に

事件が起きる。




伊織は、何も言わずに仕事を辞めて

突然ホストになってしまった。




確かにホスト風の見た目ではあったけど、

伊織は未経験。

25歳だから若くはないし、口下手。


ホストをよく知らない私でさえ、

それが茨の道であることくらい

容易に分かった。


入店から一ヵ月以上経っても

指名をとれなかったらしく、

店からのプレッシャーもあり

彼が焦っているのは明白だった。



そして彼は、先輩から言われた

「身体使ってでも女を呼べ」

という言葉を遂行した。



あることをきっかけに

伊織の枕営業に気付いた私は、

どうしても許すことができなかった。



それを機に伊織とは別れ、

私はホストという職業が

大嫌いになったのだ。



それから約半年間、

彼氏もセフレも作らずに生活した。

セックスからも遠のいていった。



二月の終わりからは

少しだけ仕事に余裕が

できたのを良いことに、

飲食店で夜勤のバイトを始めた。



時間を持て余した

ゴールデンウィークには、

風俗系のバイトにまで手を出した。


お金が欲しいというより、

一人で過ごす時間を

減らすことに必死だった。



気付けば、

しゅんくんと知り合ってから

何ヵ月も経っていた。




それでも、

距離は縮まっていない…どころか、

連絡なんてとっくに途絶えてしまっていた。

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