恋心
刺激的な出会いを果たした翌日、
しゅんくんは本当に
私を飲みに誘ってきた。
単純すぎて恥ずかしいけど、
私はこれをきっかけに
しゅんくんが好きになった。
そもそもあんなところで知り合って、
二度目があるとは思っていなかった。
また会いたいという気持ちはあったけど、
一度セックスしただけの分際で
「会いたい」なんて気軽に言えるわけがない。
それでもしゅんくんは、
"二度目"を作ってくれたのだ。
ちょっとだけ、嬉しくなってしまった。
私のトキメキはさておき、
22時に池袋でしゅんくんと合流。
そして、海鮮系の居酒屋へ。
ビールとカシオレで乾杯すると、
テーブルの上に陣取るコンロと網を使い、
注文したホタテやエビなどを
次々と焼いていくしゅんくん。
その手際の良さに、
昨日感じた可愛いという印象は
掻き消され、
無性にかっこよく思えてしまう。
何か手伝おうとすると、
私の動きを制して
「今日誘ったの俺だし、冬子さんは食べてて」
と、笑ってくれるのだった。
好きかもーなんて考えると
緊張して言葉数が
減りそうだったけど、
会話に困ることはなかった。
しゅんくんから発せられる空気が心地いい。
あんなことをした昨日の今日なんて、
ちょっと信じられない。
友だちとか恋人と過ごすみたいに
普通に楽しかった。
あっという間に終電間際。
私は次の日予定がなかったし、
泊まりになっても平気だった。
「終電大丈夫?
私はまだあるけど」
「あっ、俺やばい…そろそろ!」
そう言ってさらりと
会計を済まされてしまったので、
私は半分くらいお金を渡した。
そして、これまたあっさり
しゅんくんは駅の方へと…
…あれ? 今日はなし?
ガッカリしたというよりは、
セフレみたいなもんだし
ご飯だけで終わりとか…
なんだか調子が狂う。
それに、もう少し一緒にいたい
なんて思う気持ちもあった。
「ホテル行かないの?」
もうちょっと可愛く
尋ねるべきだっただろうか。
「え…」
しゅんくんの方が
驚いていた気がする。
「時間も時間だし、
私は泊まりでも平気だよ」
私自身も、
こんなにストレートに
ホテルに誘うのは初めてだった。
言うだけ言って、ひかれたらそれまでだ。
「嫌じゃないですか?」
しゅんくんが口にしたのは、
私からすると
かなり意外な言葉で。
「俺、今日は本当に
ご飯だけのつもりだった。
冬子さんと普通に話したかった。
昨日も楽しかったけど、
それだけにしたくなくて…」
確かそんなことを言われた
ように思う。
私はひどく拍子抜けしていた。
「昨日ホテル行ったのに
今日もまた誘ったら…」
私が嫌がると思ったらしい。
今までセフレ関係になった相手から、
こんな気の回し方をされたことはない。
それも、まだ二回目の相手に。
単純すぎる私は、
こんなことでもまた
しゅんくんを好きになる。
「時間まだあるのー?」
「仕事は明日夕方からだし、時間は…あります」
二軒目ですか?と言い出しそうな
彼の言葉を遮って、手を引いた。
「私もまだ話してたいし、
もう少し…いい?」
そして、二度目の夜を過ごした。
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