第3話

「………………………………………んん…」


今日も太陽の光が、目覚まし時計の代わりに僕を起こしてくれる。


毎日が忙しいせいでか、夜更かしというものがどうやってもできない。


決まった時間に睡魔に襲われ、大抵同じ時間帯に起きる。そして、平日は毎日1人で身支度をし、朝食をとり、学校へと向かう。休日は専ら朝は青果屋でのアルバイトである。今日は土曜日なのでもちろん後者である。


青果屋は店長と僕の2人だけで運営している。休日は店長が契約のレストランや弁当店に大量に商品を持って回る。よって午前中は店に店長が不在となる。


休日くらいは午前に店を閉めても良いのだろうが、常連さんは何かと休日でも足繁く通ってくれるので、僕が必要になってくるわけだ。


なので、休日の午前中は学校の用事でもない限りこの店で働いている。この時だけは確実に時間を開けておいてくれ、と店長が念入りに言ってくるので半ば強制的ではあるのだが…


とはいえ、店長不在であることも一因して、常連さんとの談笑に花を咲かせているのでとりわけ好きな時間でもある。店長もそこは黙認しているようである。どこか僕に負い目を感じているらしく、せめて平日に重ねてお願いしているこの時間だけでも楽しく過ごさせてやりたい、という親心に似たものがあるらしい。


常連さんが言っていたことなので、不確かなことではあるのだが…


「ところで謙ちゃん。今日はええ顔してるなあ。何か良いことあったんか?」


僕が野菜の陳列をしてると、年配のお客さんが僕に聞いてきた。


「うーーーん……特にあったわけでもないんですけど、ちょっと心優しい人と昨日会いまして…そのせいかちょっとほっこりしてるところです。」


「そうか、そうか。謙ちゃんよほど嬉しかったんやな。いつになく笑っておるわい。」


「そうですか?……あんまりそんな感じはないと思ってたんですけど、顔に出るんですかね…」


「そうかもしれんな。まあ、良いことがあったならよかったことだよ。」


そう言ってお客さんは微笑み、幾つか新鮮な野菜を買って店を後にした。


平日の、特に夕方は晩御飯の用意などで客足が後を絶たないため、こうして談笑する暇もないくらいに忙しい。比べて今はとても暇である。


休みの日の朝から野菜を買出しにくるようなお客さんは、そこまで多いわけでもない。とりわけここに来るお客さんは買い物よりも客同士の談笑に花を咲かせるためにきているのだろう。




正午過ぎを回ったか、客足は完全になくなってしまった。今日のバイトは一時までなので、あともう少しの辛抱である。バイトが終わり次第、家に帰って束の間の休息をとる。そして夕方6時から居酒屋のバイト。大方今日はそんなところであろう。



「……………………………………………………」


それにしても、本当にこの時間帯は暇である。一応は仕事中のため、暇だから勉強する、なんてことは勿論しない。………………できたとしてもしない。


もうそろそろあの人は引っ越しの荷物の搬入でもしてる頃だろうか。帰ったらバイトまでは手伝ってあげようかな。そんなことを考えながら30分が過ぎ、やがて1時間が過ぎようとしてた。


そして1時間を少し回って、今日の僕の青果店でのバイトを終わるはずであった。


しかし、未だに店長が帰ってこないため、さすがに帰るわけには行かず、僕は店長に電話を入れた。


「………あ!もしもし?店長、僕です。あの……」


「わりぃ、謙ちゃん、あと三十分くらいかかるかもしれん。帰る準備してても良いから、ちと店番続けてくれねぇか?すぐ帰ってくるから。」


「わかりました。気をつけてくださいね。」


「わりぃな、バイト代はちゃんと払うからよろしくな!頼む!」


そう言って店長は電話を切った。あの女性の引越しの手伝いでもしたいところだが、仕方がないので店番を続けることにした。


……しばらくお客さんは来なさそうである。暇な時間が続きそうなので帰る準備でも始めようかとロッカーに向かった。ちょうど、着替えを終えて帰ろうとした時である。店に誰かが入ってくる音がした。


「はーい、いらっしゃいませ。なにかご所望の品はございま………」


入り口近くに立っていたのは昨日の女性だった。


「あ!昨日の…アパートにいないと思ったらここで働いてたのね。いいこと知っちゃった!今度から野菜買いに来るときはここに来るわね!」


…快活な物言いは変わらないが、雰囲気はどこか妖艶なものがあった。


夕方で暗かったのと頭の中が羞恥の感情で埋まっていた昨日でも思っていたのだが、落ち着いている今だからこそ余計に思う。


………かなりの美人である。この辺りでは珍しい茶髪。綺麗な鼻。おっとりとした二重の目。綺麗な唇。肖像画として伝わっている初代元首にも似た、まさに『美』という言葉が似合う、そんな容姿である。服装は最近耳にするゆるふわ系という感じである。服装と見た目が相まって、第一印象に好感を持たない人はいないだろうとも思わせる、綺麗な人である。


そんな姿にうっかり見惚れてしまった。はっと我に帰り、動揺を隠すように僕は話かけた。


「あ…昨日はどうも。日が明けて会うと、少し気まずいですね。それはそうとして…引っ越しはどうですか?もう済みました?」


「へぇー、気まずいと思ったんだ。まあ、女の子の前であんな泣いちゃったしね。気にしてないから大丈夫よ!」


「うるさいですよ!質問に答えて下さい!その減らず口は玉に瑕ですね。ほんとに。」


そう返すと、彼女はにんまり笑った。


「玉に瑕って言うってことは、もしかして私って好印象もたれた?やった!君みたいにかっこいい子にそう思われてると、私ちょっと照れちゃうな。」


少し頬を赤くして彼女はそう言った。その動作をみて、僕はものすごく照れてしまう。耳まで体温が上がっているのを感じた。


…こう、動作一つ一つに可愛さが現れてくる。女の子に対する免疫がない僕は、今にでもコロッと落ちてしまいそうである。


「……こう、どうして一回で質問に答えてくれないんですか…」


「あ、ごめんごめん忘れてた!引っ越しがそんなホイホイ終わるわけないじゃない。私こう見えても友達も助けてくれる彼氏もできたことなんてないから、本当のところ結構困ってるの。」


「……………。このバイトが終わったら取り敢えず次のバイトが始まる6時までは暇なんで、手伝いましょうか?……………僕でよければですが…」



「……………………………………………」


何故か沈黙が続く。


「……………………………………………」


彼女は何故か、今にも泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔をしている。


「………………あの?どうしたんですか?」


僕がそう聞くと、彼女ははっと我に帰ったように少し慌てた口調で言った。


「いや!なんじゃないの!本当になんじゃないの!嫌でも何でもないんだけどね……」


「………………………ひょっとして僕じゃ頼りないとかですか?」


手伝いをするのを拒否されることを恐れながら、僕はそんなことを聞いた。


「違うの!全くそういうことではないの!ただね、何ていうか、誰かに手伝ってもらったりとかした事なくて……優しくされた事とかもないから何ていうか…」


……………………………………………



「…………なんかちょろいですね。そんなにぼっちだったんですか?そんな見た目なのに意外です…」


「うるさい!違うわよ!…ただ、こんな性格なのと顔が初代元首ににてるとかどうとかで距離を置かれる傾向にあって……」


「まあ、確かにその口調だと僕も嫌厭したいですけどね。パッと見だと高貴な感じもしますし…」


「………………その、なんで貴方は距離を置かないの?皆と違って少し不思議なんだけど…」


彼女は聞いてはいけない事を問うているように尻込みしながらそう言った。


おそらく推測ではあるが、彼女が言った通り、初代元首に似ている、ということが一因であろう。


僕は容赦やなんやで人を判断したりはしないのだが、この国の住民は『歴代元首』と顔が似ているというだけでかなり嫌厭されるらしい。


理由はおそらく愛国心からくるものだろうが、学校でも歴代元首は唯一無二の存在で崇高な尊敬すべきお方だと教わる事が、大きな要因だ。


なので、容姿が瓜二つだったり、歴代元首と同じ名を語ったりすることは、紛い物の模倣だと忌み嫌われるのである。


それに、特に彼女は、顔が瓜二つなだけではなく、この国では初代元首以外にほとんど存在しなかったと言う茶髪の持ち主のため、より強く、皆から忌み嫌われてきたのだろう。


____________唯一無二の元首様の、威厳を汚す紛い物…と。


そんな彼女の置かれてきた環境に憂いている事を悟られないように、僕は明るく質問に答える。


「………なんでって。そもそも距離を詰めてきたのは貴女からでしょう?僕だって貴女と同じ感じですよ。だからか親近感を感じますし…それに、なんていうか、貴女のおかげで昨日はいい気分だったのでそのお返しです。あまり気になさらず。」


それは少し遠回しな言い方ではあるが、嘘偽り無い理由だった。僕も彼女と同様に関わりを持ったほとんどの人から忌み嫌われていた。そこに救いの手を差し伸べてくれた彼女を拒否する理由など、どこにもあるまい。


「ふーん。でも、貴方も見た感じ本当に友達いなさそうね。よく見たら優しい顔っていうか、そこそこかっこいいのにどうしてなの?……まあ、少しタレ目だから頼りないとか?」


「また痛いとこをついてきますね。まあ、友達もいないのは確かですけど……多分、天涯孤独だからじゃないですかね。皆んな僕の素性を知ったらにげていきますから。一時は友達とも仲良く過ごしたりはするんですけど、気を許して出生の事とか話したら、皆いなくなるんです。」


少し声のトーンを下げながら、僕はほんの少しだけ、置かれている状況を話した。


「薄情な人たちね。まるで私の周りの人みたいじゃない!」


「まあ、あなたはそうならないように願ってますけど…」


僕がふと、そう言うと彼女はぷいっとそっぽを向いて不機嫌に言った。


「本っっ当失礼ね!そんな事しないわよ。もう、本当に前の私を見ているみたいで腹が立つわ!」


そんな返事に僕は拍子抜けになった。それを見てか、彼女は続けた。


「どっちかっていうと、私もそっち側の人だったから。なんとなくあなたの気持ちもわかる気がするわ。まあ、まだ何も知らないんだけど…」


彼女の言葉に、僕はふと、まだ一番大事な事を聞いてない事を思い出した。


「…………名前。 名前聞いてませんでした。今更ですけど、教えてもらえませんか?」


そう聞くと、彼女は少し照れながら言った。


「咲本希。咲本希よ。いい名前でしょう?あなたは?」


「佐藤謙です。謙虚の謙でゆずるって言います。ここのお客さんとか、店長にはケン君、謙ちゃんって呼ばれています。」


「そっか、そっか。うーん、なら私も謙君って呼ぶわ。よろしくね!謙君。…そうね…私のことはそのまま希でいいわ!」


「わかりました。よろしくお願いしますね。希さん。」


僕達はそう言って微笑み合い、自己紹介の後に握手をした。


…………………………………………



「……………………………………………」




「……まったく。女の子といちゃつくためにバイト時間延ばしたわけじゃねぇーぞ。ついに謙ちゃんも色恋に染まるようになったか。」


「………………………ッッッッ!!!!」


店長に見られていた。どこからかはわからないが、店長は僕らを見て、にんまりとし続けている。


途端に僕の顔はおでこの先まで赤く染まった。


僕がその状態で固まっていると、希さんは店長へにこっと笑いかけて、何事もなかったように買い物を始めた。


ジャガイモに人参、胡瓜に、玉ねぎと、一人で持てるのか、という量をカゴに入れて、購入した。


「沢山ありがとよ!姉ちゃん。ところでどうやって持って帰るんだい?姉ちゃんこれ一人でもてんのかい?ダンボールならあるから貸すけど、大丈夫かい??」


店長が希さんを心配してそう言った。


……………それはただの杞憂に終わった。


「もぉー。店長さんも失礼なこと言いますね。私だって立派な女の子ですよ!こんなの持てるわけないじゃないですか!」


希さんは、そう言って僕の方をじーっとみて、満面の笑みを僕に向けた。


「謙君とはお隣さんですよ!謙君、すごい優しいんですから!引っ越しだって手伝ってくれるらしいですし…」


だから、お願い!!、と言わんばかりの笑みをもう一度僕に向けてきた。


その懇願するような、それでいて小悪魔的な様子に抗体のないぼくは、ころっと落ちてしまう。



………………………ずるいですよ。希さん……






そんなこんなでバイトを終えた僕は希さんの荷物を持って帰宅する。我ながら自分ちょろいなぁ、と反省した。


アパートに着き、荷物を渡して自分の部屋へと戻った。希さんはまだ荷物の搬入を業者の人と終えたばかりで忙しそうにしていた。


なので僕は昼食を誘う事を諦め、カップ麺を食べ、早々に希さんの手伝いへと向かった。


「あ!本当に手伝ってくれるんだ!ありがとう!なんか色々ごめんね〜、夕食とびっきり美味しいのを作ってあげるからそれで許してね!」


無邪気に彼女は笑いながらそう言った。


「いえいえ、僕も昨日の借りというか、そんなものもありますので、あまり気にしないでください!」


「わかったわ。ありがとう。なら少し甘えるわね。」



……………………気にするなっといった事を僕は間もなく後悔することとなる。



「えーっと、冷蔵庫はね〜、ここの隙間に!うーんと、そしてその食器棚は〜………ここ!そしてそして本棚はそこで〜…」


「ちょっと、ちょっと待って!!!!そんなにいっぺんに言われても……それにバイト終わり直後なので少し疲れが…」


僕がそう言うと、希さんは、はっと青ざめて慌てふためいた様子で言った。


「わ!ご、ごごごめんなさい!私、人に手伝ってもらったことなんてほぼ初めてだからついつい嬉しくて……本当にごめんなさい!」


そんな慌てた彼女の様子を見ると、言い返す気も無くなってくる。


「あ……いえ、別に大丈夫ですよ!ま、まあ、6時からバイトですし、それまであんまり時間もないので2人でしか運べないものとか、男手が必要なのとかは早いうちに済ませちゃいましょう!」


「ほ、本当にありがとうね!すっごく助かる。でも、無理しないでね!6時から仕事があるならあまり疲れさせてもいけないから…」


そう希さんは言って、申し訳なさそうにしていた。







大分、大きな荷物の整理も終わり、気づけば夕方5時を回っていた。


「それじゃぁ、希さん。ぼくはバイトがあるのでこの辺で失礼しますね。」


「本当にごめんね!無理言っちゃって。なんていうか、会ってからあなたの恥ずかしいところばかり見てきたから、少しだけ頼もしくおもっちゃった。」


「前半余計ですよ…全く。」


ぼくが少し不機嫌そうにすると、彼女はバツが悪そうに、ごめんごめん、と笑い舌を出して謝った。


「まあ、でも、ご飯は楽しみにしててね!えっと…帰るのは何時くらいになりそう?」


「そうですね。今日は土曜で仕事帰りの人とかはいつもみたいに多くはないので、残業がなければ夜の10時ごろになりそうです…遅くなってすいません。」


そう僕が言うと、希さんは微笑んで言った。


「大丈夫よ。わたしも後の片付けしないとだし。そのあと作るから丁度そのくらいの時間になりそうだし。まあ、10時半くらいになったら、一応貴方の部屋に来るわね!」


「わかりました。ありがとうございます!んじゃ、行ってきますね!」


僕は明るくそう言い、希さんに手を振ってアルバイト先の居酒屋へと向かった。


彼女は僕の姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。





今日の仕事場への足取りはとても軽い。やはりこの後のことが楽しみすぎて、高揚しすぎているようだ。


いつも通り、居酒屋の裏口から入り、制服へと着替え、仕事につく。


お客さんからの注文を受け、厨房へ伝えに行く。今日はお客さんが少ないとはいえ、席は半分以上は埋まっており、昼とは違って暇な時間は全くない。


そんな風に忙しく働いていると


「謙ちゃん、今日はいいツラしてんな!!ついに謙ちゃんにも女ができた!!??」


「何!?謙ちゃんに女だって??おじさん悲しいよ。謙ちゃんに女ができたなんて!!!」


「ええ!!??あの謙ちゃんに女が!!???冗談は顔だけにしとけよ!!!」


「その女の話詳しくきかせろよ!!!えらい上玉なのか???なんせイケメンの謙ちゃんの連れだからな!!!おじさんにもおしえろよ!!!!」


「……………………………………………………」


酒に酔ったおじさんたちが口を揃えてそんな事を言ってきた。仕事の邪魔しないでください!!と、小切れると、おじさんたちは一斉にコールを始めた。


「「「けーーんちゃん!!おっしえろ!!!けーんちゃん!!!おっしーーえろ!!」」」


「………………………………………………」


どうにも謙ちゃんコールは収まりそうにないので、僕は無言のまま仕事を続ける。


………だが、終いには謙ちゃんコールは止むことはなかった。


謙ちゃんコールが鳴り響く中、今日のバイトは終わった。


「今日はえらい謙ちゃん人気だったな!!!!なんだーー??本当に女でもできたのか???謙ちゃんも隅に置けねえな!!!!」


居酒屋の店長までそんな事を言ってきたので、僕は大急ぎで帰宅の途についた。






暗い夜道の中、ルンルンと高揚しながらアパートへと向かう。どうしてもこのあと待っている食事を楽しみでならない。そのせいか、いつもよりも足取りが軽く、速くなっていた…



20分ほど歩いたか。遂にアパートが見えてきた。時間は10時半をまだ回っていない頃だった。いつものようにまずはポストの中に何か入っていないか確認し、自分の部屋である103号室へ向かう。


…………………………………………………


夜なので外は静かである。そんな沈黙の中、急に目の前から優しい声が聞こえる。


「あー!!おかえり。謙君。用意できてるよ。もお、遅いんだから。全く…」


そこには希さんがいた。まだ10時半を回っていないため、部屋にはまだ来ないだろうと油断していた。


………完全に不意打ちにハマってしまった。


ぼくは紅潮させながら言う。


「まだ、10時半回ってないですよ……」


「もしかして、部屋の前でずっと待ってていてくれたんですか??」


その問いかけに、彼女はぼく以上に紅潮した様子で言った。


「そ、そんなわけないでしょ!たまたま、今ちょうど来たのよ!もう、変なこと言わないで!調子狂うなら…」


そのやりとりにぼくは思わず微笑んでしまった。


それを見て、彼女も満面の笑みを浮かべた。


「何笑ってるのよ。気持ち悪い。もう!冷めないうちに速く食べましょ!ほら、入って!」


照れ隠しからか、彼女は慌ててそう言った。


「そっちこそ笑ってたじゃないですか…」


理不尽な言われように、ぼくはそう切り返す。


「そんなこと言うなら、食べさせてあげないんだから!謝るなら速く謝りなさい!」


これまた理不尽な言われようにぼくは微笑んで答えた。


「ごめんなさい。お腹空いちゃいました。ご飯食べたいから許してください。」


ぼくがそう言うと彼女はまるで勝ち誇ったように言う。


「うん!素直でよろしい。ならば特別に食べさせてあげます!さあ、入って入って!!」


女の人の家に入っていいのかな〜と妙に緊張しながらも、ぼくは玄関で靴を脱ぎ、彼女の家の中へと入って行った。



……………………それから、ぼくがボヤいて、大恥をかいてしまうほどに切望していた、「暖かい食事」が始まった。

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TOCHIKI〜語り継がれる物語〜 たけるんば@ @Takerunba612

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