第4話 喫茶REDRUMへようこそ
男と女が歩いている。親し気な様子から、どうやら二人は付き合っているようだ。
「お、喫茶店がある。少し休んでいこうか。『喫茶REDRUM……』不思議な名前だねえ。え? 入りたくないって? 店の名前がおかしい。何で? へー、そうなんだ。ホラー映画に『REDRUM』と言うセリフがあるんだ。逆さから読むと『MURDER』になるんだ。 いやあ、流石にそこから店の名前を取らないでしょう~。疲れたから入ろう、ね!」
男と女が入店する。二人は眺めが良い窓際の席に座った。
「いらっしゃいませ」
あご髭を生やした、体格の良い店員が水を持って来る。
「もう注文して良い? 俺はアイスコーヒー。彼女はホットブレンド」
「かしこまりました」
注文を受けた店員は、カウンターの奥へと消えて行った。
「意外と良い店じゃない。店員もしっかりしてるし、キミがMURDERとか言うから変な店かと思っちゃったよ。うん。きっと美味しいコーヒーを飲めるよ」
しばらくすると、店員が飲み物を持って来た。
「お待たせしました」
「お、来た来た」
「青酸カリ……ブラックコーヒーでございます」
「え? 青酸カリ……?」
「失礼しました。ブラックコーヒーでございます」
「いや今、青酸カリって言ったよね!?」
「言ってません」
恐縮しながら店員は言う
「凄惨なコーヒーでございます」
「余計悪いわ」
「失礼します。お客様わたくし、カクゼツ…、カルーセル…、滑舌が良くなくて」
「本当にわりーな。何だよカルーセルって」
「滑舌の方が良くなくて」
「そんでブラックコーヒーじゃなくて、アイスコーヒーな」
「失礼しました。只今お持ちいたします」
「あーびっくりしたよ。変な店員だね。うん、滑舌が悪いんだって。まあでも、美味しそうだったから、もうちょっと待ってみようか。あ、戻ってきた」
「お待たせしました」
「来た来た」
「チキンピラフでございます」
「おい、コラ!!」
「はっ?」
「『はっ?』じゃねーよ! アイスコーヒー、チキンピラフ、一文字も合ってねーよ!」
「お客様、申し訳ありません。わたくし滑舌の方がちょっと…」
「滑舌関係ねーだろ!」
「カルーセルの方が…」
「お前わざと間違えてるだろ。『カルーセル』言いたいだけじゃねーか!」
「ふふっ…」
「『ふふっ』じゃねーよ。何『困ったお客さんだな?』みたいなオーラ出してんだ」
つづく
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