第137話 チーム分け
「それにしても本当に経験者が多いわね。それにピアノもやっている人もいるし……先生本当に驚いちゃった」
先生の感動はまだ続いているようだ。
「今日は……経験者の皆さんは全員で未経験の人たちに教えてあげて下さい。明日からは当番を決めて順番に教えてあげてね」
そういうと先生は振り向いて
「三年生チームはこの三人の編成で良いのね?」
と聞いた。
「はい。基本はこれでいいです。後はその都度、適当に組みます」
「はい、分かりました。では結城さんところ二年生チームは?」
「私のところは立花君と藤崎君それに鈴原さんと上田さんが入ります」
と瑞穂が言い終わるや否や
「あ、俺も入れてや」
と篠崎拓哉が手を挙げた。
「あんたおったんや?」
瑞穂は拓哉を一瞥して言った。
「おって悪かったな」
音楽室は部員の笑い声が響いた。
「まあええわ。コンバスやったけ?」
「ああ、そうや」
「ちょうどええわ。入りいな」
瑞穂が笑いながら拓哉の加入を了承した。
「二年生チームはそれと清水さん、井田さん、川上さんのチームとの2チームになります」
瑞穂はきっぱりとよく通る声で先生に言った。
「清水さんそれでいいの? バランス悪くない?」
先生は琴葉に確認するように聞いた。
「はい。私たちのチームは基本的に一年生と一緒にやっていくつもりです。それに豚さんチームの結城さんも手伝ってくれるので大丈夫です」
と琴葉はにこやかに答えた。
「誰が豚さんチームや!!」
瑞穂は憤ったように琴葉に食って掛かったが音楽室は笑い声がこだました。
「ほかに何か質問はありますか?」
先生は音楽室を見回しながら聞いた。
一年生のヴィオラの谷田彰が周りをうかがう様に手を挙げて聞いた。
「あの……器楽部と言いながら弦楽器ばかりですけど……管楽器はやれないんですか?」
「そうね。良い質問をありがとう。今のところは間違いなく弦楽部ね。一応管楽器は吹奏楽部からの兼務でしのごうかと思っていたんだけど、この中で管楽器をやりたい人はいますか?」
先生は片手をあげて部員に聞いたが、誰も手を挙げなかった。
「まあ、管楽器をやりたい人はほとんど吹部に行くでしょうね。室内管弦楽とかをやりたいという明確な意思でもない限りは来ないと思うわ。でも、そう言う人にも来て欲しいのであえて弦楽部にせずに器楽部にしたのよ。これは先生の我儘かもしれないわね」
そう言うと長沼先生は軽く肩をすくめた。
「まあ、吹奏楽部と器楽部は昔から仲が良いので、その内一緒にやる事もあるでしょう」
そう言って話を締めくくるとパンと手を叩いて
「それではまずはパート練習から始めましょう」
と部員に声を掛けた。
部員はパート練習を再開した。
もっとも今日は初心者に楽器の持ち方から教えるところから始まった。そもそもパート練習はこの初心者のためにあると言っても過言ではない。十年選手の経験者は、まず最初に個人で練習してから全員で一気に音合わせが出来る。わざわざパートで合同練習をする必要はない。
今日はほとんどマンツーマンで初心者を教える状態だった。
「石橋(ばさ)、爪切り持っとぉかぁ?」
唐突に千龍さんが声を上げた。
「そんなもん持っとぉかぁ」
「あ、私持っとぉわ」
「お、彩音サンキュー、流石や」
そう言うと千龍さんは自分が教えていた一年生に向かって
「金子ぉ、お前爪伸び過ぎな。彩音に爪切り借してもらえ」
とヴァイオリンの弓を軽く振りながら言った。
「あ、済みません。お借りします」
金子と呼ばれたヴァイオリンの一年生は彩音先輩から爪切りを受け取っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます