第9話 なぜ底辺校に行ったのか

 読者からしたらそもそもの疑問としてなぜ中学校時代に勉強をしなかったのかということが挙げられると思います。そこで本項では私が加茂暁星に行くことになった経緯を説明します。

 私は小学校時代から勉強ができない人間でした。自分では勉強を頑張ったつもりでも成績表の評定は10段階で5,6が勢揃いと言ったところです。しかし、それでもこれらの成績水準を中学校卒業まで保っていたのならば公立高校に合格し、学費という面で両親に迷惑をかけないで済んだかもしれません。そんな私の平凡な成績表の評定はあるきっかけを境に1,2という最低評価のオンパレードになりました。そのきっかけが「いじめ」でした。

 いじめは小学校5年生の夏から中学校3年生の夏までいじめっ子が代わりながら続きました。いじめによってなぜ成績が落ちたのかというと精神的ストレスと物理的ストレスの2つが挙げられます。まず精神的ストレスです。学校でいじめられるようになり、暴力を受けることが日常茶飯事になりました。また、小学校の時には足をロープで巻きつけられながら廊下や階段を引きずり回され全身があざだらけになったこともあります。これらのようないじめ行為が日常的に行われていると不思議なことに勉強に手もつかなくなるのです。

「明日も殴られる。嫌だ。怖い。死にたい」

 これらのような思いが先行し布団を被って震えていたことを今でも覚えています。とかく人間は自分の環境に恐怖の対象が現れるとその対象からどうやって逃れようか必死で考えます。本来勉強に発揮しなければいけなかったパワーはここで削がれていたと今では考えています。

 また、2つ目に物理的ストレスが挙げられます。これはどういうことかというと学校で使う教科書や文房具等にもいたずらをされ、使い物にならない状態だったのです。特にショッキングだったのが通学カバンの中に給食で出てくる牛乳パックを入れられて通学カバンの中で爆発させられたことが挙げられます。毎日5時限、6時限の授業で使用していた教科書類が全て牛乳まみれになるのです。通学カバンも牛乳まみれで水で洗っても洗っても落ちません。これらのいじめは親に迷惑がかかると思ったので言い出せませんでした。仕方がないのでなけなしの小遣いで洗剤を購入し放課後に公園の水道で洗っていたことを思いだします。

 このいじめのせいで教師からも無視されるようになりました。教科書は牛乳まみれで学校には持っていけない。いじめられていることも誰にも言えない。私は毎日の授業を机に突っ伏して聞いているしかありませんでした。もちろん教師からは怒られます。

「なんで教科書がないのか。俺を舐めているのか」

と。その時の私はいじめられていることが恥ずかしいことだと思っていたので誰にも言い出せませんでした。私が誰にも言い出せないことを言いことにいじめっ子はさらに物理的ないじめを加速させました。例えば、牛乳で爆発した以外の教科書類にも嫌がらせをしてきました。具体的にはトンボの死骸をページ毎に押し花のようにする等、常軌を逸した行為をしてきたのです。また、他の教科書はゴミ箱に捨てられたりもしました。さらには、各教科の提出物を提出する時に私のプリントだけ抜き取られてゴミ箱に捨てられたことも多くあります。このような勉強道具がなくなっていく中で勉強ができるはずもありません。私が何も言わなかったのが悪いのですが教師達にも完全に無視され日々は過ぎて行きました。

 このような状況で最後に追い打ちもありました。校内でタバコの吸い殻が見つかったのです。このタバコの吸い殻の犯人はいじめっ子でしたが私は犯人に仕立て上げられました。いじめっ子は私にタバコを買いに行かせていたのです。それによって私は授業中にいないことがありました。このような状況で私が犯人に仕立て上げられました。そしていじめっ子達に私がタバコを吸ったと証言されたのです。これらのことから私の内申点も最悪となり推薦入試を受ける資格すらなくなりました。

 幸運なことに中学校3年生の夏頃にいじめっ子が糾弾させられる立場になり私へのいじめは止まりました。そのおかげで高校に進学できたといっても過言ではありません。このいじめを受けた経験も学歴コンプレックスと関係している部分があるのかもしれません。人から否定される、拒否されることが自分自身への不利益に繋がってしまうという強迫観念があったのだと思います。

 閑話休題。話を高校に戻して私自身の学歴コンプレックスの発症経緯を辿って行きます。

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