34話 月

 月がどろりと熔け落ちた。

 機械仕掛けの竜の炎は、月をあまりにも簡単に熔かす。

 パルチェは、フロイはそれが最も効率的と知っていたのか否か、月の中心を貫くように竜に白炎を吐かせた。

 なぜか、月の使者は抵抗しなかった。二人の視界にあの異形の姿はない。まるで――なにもかもあきらめてしまったようだった。

 そうして炎に耐えきれなくなった月は――


 中心から砕けるように割れた。


 大量のソーマが青の世界に、白の世界に、大地へ注がれていく。


 世界から死が消えた。

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