25話 空の果て

 目を開けると、星が見えた。

 パルチェははっきりとしない意識の中、あたりを見回した。


「あっ、起きた?」


 すると、隣でフロイが微笑んだ。


「…………」


「……起きてる?」


「起きてる」


「なら、どうしてそんなぼーっとしてるの?」


「信じられなくて」


 さっきのことが。


「うん、そうだねー。あんな大きな機械仕掛けの生き物がいるなんて初めて知ったよ」


「私も」


「もう、大丈夫?」


「うん。フロイは?」


「あたしは……パルチェのおかげで」


「そう……そう?」


「な、なんで聞き返すの?」


「何もしてない」


「してくれたよ。あたしの隣にいてくれてる。あの日からずっと」


「……そう」


「行こう」


「うん」


 パルチェは再び手綱を握り、すっかり群青色に染まった青の世界を、月を目指さず、上へ、上へと――


「きっと、壊せる」


「うん。この竜があんなにすごい炎? 吐けるなんて知らなかったよ」


「それも、そうだけど……フロイは乗り越えたよ」


「……そっか」


 それから二人は無言で飛び続けた。

 どれほど飛んだだろう。頭上になみうちぎわのようなものが見えてきた。


「あれが……青の世界の果て……」


 それは月に向かって長い塔を伸ばす金属の丘だった。

 二人の旅に終わりが見えてきた。


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