7話 少年と、出会い

 突然の来訪者に驚いた雲の民だったが、二人が空の民だと知ると納得したように笑顔になった。空の民が雲の民の町に訪れることは珍しくないのだ。空の民は二人に食料や日用品を買える場所を教えると散っていった。

 丘の上に作られた町には多くの人々が暮らしているようで活気にあふれていた。

 鋼鉄と蒸気で彩られたそこは、雲の民が何人も、何十人も、何百人も往来していた。

 雲の民は白の世界に町を作っているため、その町の構造は少し特殊だ。

 地面からは水蒸気を相殺するために温かく乾いた風が吹き出し、気流の調整により視界は良好だ。


「雲の民の町はあったかいね」


「うん」


 空は寒い。機械仕掛けの竜の胎内は温かいが、それは二人が暮らすわずかな場所の話だ。

 ここまで広範囲を温めることはできない。


「買い物――」


「うんっ! まかせて!」


 パルチェの言葉が終わらないうちにフロイは竜から持ってきたそりを引いて町の中に身を投じた。

 パルチェは文字や計算ができない。空の民に生まれた者は風の言葉を生まれつき解することはできるが、それ以外の教育は行われない。そのうえ、パルチェは生まれて間もなく機械仕掛けの竜に拾われたため空の民として知っておくべきことの大部分を知らない。

 その点、地の民のフロイはかなり小さいころから様々な知識を教え込まれ、計算を身につけさせられる。青の世界では役に立つことも少ないが、こういった場面はフロイの出番だ。

 フロイは露店市マーケットで軽やかに動き、相手の顔色を窺いつつ原価を予想し値引き交渉を行い、必要なものを買いそろえていく。

 持ってきたお金が半分も減らないうちに買い物は終わった。


「終わったね!」


「うん」


「そしたら、ごはん食べて洋服でも見ない?」


「ご飯は賛成。でも、服はいい」


「どうして?」


「フロイの着せ替え人形になるのは嫌」


「えー」


 フロイが残念そうな表情を見せる。

 本当は空の民のパルチェが着れる服のサイズは、雲の民や地の民が着るものだと子供向けしかないことが原因なのだがフロイはそれに気づかない。

 二人は露店市で野菜の粥と焼いた肉の串を食べた。保存加工されていない野菜や干し肉や塩漬けの肉以外は青の世界ではなかなか食べられない。


「おいしいねー」


「ん」


 いつもおいしそうに食事をするフロイだが、この日ばかりはパルチェも顔をほころばせていた。青の世界ではなかなか食べられないということもあるが、生から調理したものはおいしいのだ。

 ご飯を食べると、二人は機械仕掛けの竜に戻った。

 竜の餌も補給するかどうか迷ったが、まだ幾分か余裕があったので今回は見送った。

 買った品々を二人がかりで倉庫に。その作業の途中、フロイが倉庫の中で見覚えのない木箱を見つけた。


「なんだろ?」


「知らない」


 パルチェも見覚えのないものらしい。

 フロイが箱を開ける。そこには――

 一人の少年がいた。

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