第12話 ンネイセ青年、王子様を救う
博士は空から降りてきた王子さまを仕掛けでもないのかと、
じっと見られていると誰でもそうでしょうが、気味が悪いというか照れくさくなるように、王子さまも気恥ずかしくなっていました。
「本当に、どうしたのですか?」
言われても博士はうなるばかりで、
王子さまが、
「あれっ、僕と同じようにマフラーをしている?!」
と言いますと、ハゲタカはそっぽを向いて、
「ふん、俺のはとれねええよ。」
と言いながら、ごちそうがさらに増えたことに気をよくしたのか、たまった
「腹が減ったよ、もうたまんない。飯が要らねえ奴は別だが、俺たちはさっさと食事して、おねんねするのが一番さ。ウヒッ、ウヒヒ・・・。」
生唾ももう飲み込めないと言った感じで、どうしようもない有様です。そして、ハゲタカの歌はドンドン変わっていきました。
「ほれほれ、ちょっと。あと、ちょっと・・・。」
あまりにもハゲタカが上機嫌でにぎやかなものですから、博士に科学者としての心が戻ってきたのか、オヤッという顔つきになっていました。そして
博士は、ハゲタカに言います。
「おおい、ハゲタカ君。これは、何かね?」
「ああ、それはヘビだよ。足がついてたら、ムカデだろ。へっへっへっ・・・。」
ハゲタカは、満足そうに言っていました。続けて、
「おい、ご老体。ウソと思うなら、触ってみな。イッヒッヒッ・・・。」
とも言うのです。
ハゲタカは言葉巧みに、二人の視線を自分にくぎ付けにしていました。毒ヘビは、降り立った王子さまの足下まできています。そして長い体をグッと縮めると、おもむろに頭をもたげ裂けた口から毒腺を持つ鋭い牙をのぞかせて、今にも王子さまめがけて飛びかかろうとしていました。
「あぶない!」
声と同時に毒をしたたらせて飛びかかった毒ヘビでしたが、残念なことに王子さまの足には噛みつくことができませんでした。できないどころか、ブンブンという音を立てて何度も円を描き宙に舞っていたのです。
毒ヘビは回転しながらも王子さまと博士に噛みつこうとしてカチカチと歯を鳴らしますが、危険を察知した王子さまはフワフワと空に舞い上がります。あぶないのは博士でしたが、そこは昔取った
じつは博士は過去に新体操をしていたので、見る人が見たら迫真の演技に拍手喝采だったと思われるほど鮮やかでした。
それはそれとして、叫んだのはンネイセ青年でした。どうして、ンネイセ青年がここにいるのか? 不思議に思われる人も多くいると思われますので少し説明すると・・・、砂漠に一歩踏み出したンネイセ青年でしたが、歩いて行くのはとても疲れるし時間が掛かると思い、草原と砂漠の際までずり落ちていた家の人に事情を説明して家を借りるとやってきていたのです。
キャタピラーなら砂漠でも簡単に移動できますし、何よりも博士への食料を運ぶ手間が省けます。そういうわけで砂埃を巻き上げ博士目指して一目散にやって来ていたのですが、どうしたことか博士の側にいる見たこともない少年に毒ヘビが飛びかかろうとしていました。
飛び上がった毒ヘビの尻尾を間一髪で握りしめると、自分もかまれないよう猛烈な勢いで振り回します。ブン、ブン、ブブンと音がするほど勢いをつけると、空に向かって放り上げていました。
あまりの速さに目を回した毒ヘビは、口を閉じるのも忘れて牙をのぞかせたままハゲタカめがけて飛んでいきます。
「ゲッ、ゲゲゲエ?!」
驚いたのは、
「オー、ノー! 逃げるべきか・・・? 受け止めるべきか・・・? 私はどうすれば良いのだ・・・、それが問題だ?!」
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