百年の隔絶
白里りこ
プロローグ
冷たい夜、祝宴が途絶えて、突然独りになった。その時の感覚がずっと残っている。
黒い森に囲まれた城は、僕だけを置いて眠りについた。
僕も、誰も、こんな事態を予測してはいなかった。凍りつくような恐怖の後、僕は絶望的な気分で、力無く姉を揺り動かしたり、姉の婚約者をぺちぺち叩いたりした。心の中ではしきりに、どうしよう、どうしようという声が繰り返された。
城は既に網の目のように包囲されて、味方は全員倒れている。敵方は炎を使わないし、月すら黒雲が覆い隠した。ただ一つ、沢山の蝋燭が光を放つこのダンスホールも、みんながみんな踊りもせずに倒れ伏すだけでは寒々しいばかり。こんな光の孤島に僕だけ取り残されたって、自力で逃げ出す力は無いし、家族と離れるなど考えも及ばない。
やがて僕は、誰かを起こそうとする努力が無意味に思えてきた。そこで、冷え切った床に座り込んで、ぼんやりしていた。
もう、どうしようもない。ここで永遠に座っていようか。それとも一緒に眠ってしまおうか。
今でも事あるごとに思い出す、あの日の感覚──突然の戦慄と、空虚な諦観。
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