第4話

 一旦イヌと別れた桃子は家へと帰ってそして、モモタロウは おにを たおし、それからこっ酷く叱られましたうばわれたものを とりかえす たびに でる のです。

 桃子はじくりと罪悪感もくてきちは わかって います。を覚えましたがそれでももう絶対におにがしま です。そこには おにたちが りゃくだつ止まることはできません。 して いった たくさんの ものが ある のです。

 昼には学校に通い、夜はモモタロウは かんがえ ました。こっそりと町へと出かけ現在のおにを たおすには どうすれば鬼ヶ島の場所を調べます。 いいんだろうか と、かんがえました。

 町には人と、それから鬼と、いまの モモタロウは きびだんご だけしか 混在して二つの匂いの区別ももって いないのです。りゃくだつを くりかえして ままならないほどでした。いるだろう おには きっと たくさんの

 そう、いるのです。ぶきを もっている だろうことは都会の喧騒に鬼たちは よそうが つきました。紛れているのです。なので、かんがえ ます。

 桃子にはそれがとても我慢なりません。ひとり やまを おりながら、かんがえる のです。そう、のうのうと人と鬼が混在するひつよう なのは ぶきでした。いくら モモタロウが世界がとても我慢なりません つよく おおきく そだった とはいえ、むてでは 

 恐怖で、力で、この世界をかき乱したおにと やりあう ことなど できは しません。存在が人に紛れているとあたまを なやませ ながら げざん すれば いうことが許せないのです。そこには くちた むらが ひろがって いました。

 ですが鬼も巧妙ですので中々モモタロウは いっしゅんだけ しぶい かおを尻尾を見せません。 して、それから くずれおちた むらの なかを

 一週間二週間と無収穫で時が ごそごそと さがし はじめる のです。過ぎ去っていきます。歯がゆい思いでした。そう、だれ ひとり そんみんが いなくなった むらから

 そんなある夜の出来事です。 いくつかの かたなを はいしゃく するため なのです。そいつは唐突にやってきましたこの むらに すておかれた ちょうとうを つかって

 桃子がようやくと探り当てた鬼を おにを たいじ できれば それは むらに とって尾行しているときの出来事でした このうえない くように なるはずです

 夜の繁華街、煌びやかで物騒なところですただ それでも やはり むらから むだんで はいしゃくそんなところを十六才の少女が一人で歩いてしていくことには かわり ありません。ので、いればそれはもう目立ちます。ですが誰もこころぐるしい おもいも あるよう でした。声を掛けようとはしませんでした。そうして しばらく むらの なかを あさって、

 それは何故かというと、本来ならば目立つやっとの おもいで にほんの たちと はず、目立つべき存在であるはずの桃子はいっぽんの こだちを みつけます。全くと言っていいほどモモタロウは それを こしへと さげ、人目に止まっていないのです。ぱんっと きあいを いれる ために みずからの ほおを はり ました。

 それは桃子が覚醒したモモタロウの力のすると、どう でしょう。いっぴきの イヌが一端です。鬼を殺すために鬼の目 くち おちた いえの うすぐらい かげから から消える術、そう隠形の術ですすがたを あらわした では ありませんか。

 ですから、桃子は制服のままで「やい、おまえは なにものだワン! 堂々と夜の町を調べることができるのです。そのかたなを どうする つもりだワン!」

 そしてそれを見破って声を掛けてきたのイヌは モモタロウに くって かかります。がそいつ、即ちサルでした。


「お嬢さん、こんな時間に「ぼくは モモタロウ。このかたなを かりうけて何をしているんだい?」       おにを たいじしに おにがしまへと いくんだ」


 桃子はギョッとして、思わずモモタロウのモモタロウは どうどうと こたえました。力の一端、長刀、長船法光へと手を掛けます。


「おっと、違う違う、僕は鬼じゃないよ」「ワン! そんなの しんじられないワン!」


 飄とした大学生風の男は慌てた様子イヌは グルルと うなりました。で両手をあげます。


「じゃああなたは何? キジ?」しかし モモタロウも ここで ひく わけには いきません。

「分かってるんじゃん……。僕はサルだよ」どうにか いぬに なっとく して もらおうと 

「そう、話は後にしてくれない。今私忙しいから」あれこれ ちえを しぼり だしました。


 桃子は尾行の真っ最中なのです。    イヌの めのまえで、うーんうーん、とこえを あげる のです。


僕も手伝うよ、鬼には少し恨みがあるしね」それを いぶかしんだ イヌが といかけてきました。

「そう、ありがと」        「おまえは いったい なにを かんがえて いるんだワン!」


 桃子とサルは連れ立って鬼の後を追い「どうすれば おまえを せっとく できるか、だよ」掛けていきます。

 相手が怪しい接待店へといぬは あきれて しまいました。入れば出てくるまで入り口で張り、モモタロウとは なんて ばかしょうじきな やつ なのでしょうか。相手がタクシーでまいったようです。移動を開始すれば建物の上階までなにより あまりにも ばかしょうじきな 一気に駆け上ってそこから屋根伝いに力をモモタロウのことが しんぱいに なって 開放して追いかけます。しまった のです。

 距離も十全に取って「ワン! しかたないワン、おまえ 万全を期しての尾行ばかそうだから しんぱいに なるワン!ですので、万が一にも おれが ついていって やるワン」バレたりはしないだろう、とある種の高を括っていたのもまた事実でした。

 つまり何が言いたいのかというと、「ほんとうか! ありがとう たすかるよ」桃子とサルはまんまと敵の本拠地を暴き出す「ただし、じょうけんが あるワン!」ことには成功したのですが、それはいぬの ことばに、モモタロウは なんでも鬼たちの策略の一部でもありました。 いってみろと いわんばかりに うなずき ました。

 そう、自分ちのホームへと桃子と「そのせに つめてある きびだんごをサルを誘い込んで、物量で討ち よこすワン! それが じょうけん だわん!」滅ぼす算段だったのです。

 しかしその全てにも増して桃子のおやすい ごようだと ばかりに 虚を突いたのは現代の鬼ヶ島がつつんで あった きびだんごを とりだして 存在するその場所でした。モモタロウは イヌへと わけ あたえました。

 それはテレビでよく映る場所ですこころづよい なかまを えた モモタロウはそれは誰しもがそれとなく形を こんどこそ おにがしまへと むかいます。知っている場所です。

 塔のような中央部から左右対称の三階建てのみずうみの まんなかに そびえたつ おにがしまは まだまだ とおい のです。建物がくっついた形をしている建造物です。えっちらおっちら、のを すすみ、もりの いりぐちまで やってきました。

 そう、みなさんご存知の永田町にあるモモタロウは そこで もりを みすえて 国会議事堂、それこそが現代の鬼ヶ島だったいかりに こぶしを にぎります。いぬも そうけ だたせて ほえ たけります。のです。

 その広い庭のような場所にひしめきたるはそうです、もりは すべてが やけおちて しまって みるかげも ありません でした。数十の鬼たちです。そこに桃子が腕をいかりに ふるえる モモタロウと イヌを じぃと のぞきこむ ような切り落とした鬼はいませんでした。 しせんが ひとつ、ありました。

 手の早いことで、「おまえは……、なにものだ!」もうすっかり鬼たちにそいつは サルでした。桃子の情報は流れきっていたのですサルは おっかな びっくり、おびえた ようすで、                    だけれど きぜんと して モモタロウたちへと たちはだかり ます。

 鬼を滅するモモタロウとずぃと まえに でて いえど、さすがにこの数なのろうとした モモタロウをでは多勢に無勢です。           イヌが せいして、かわりに たからかな なのりを あげました。


「なぁ、これはまずいよ。一旦退こう」「おれと このかたは これから おにがしま へと おにを たいじ しにいくんだワン!      じゃまだて するな、ワン!」


 サルそう桃子に提案します。それは「おにを たいじ……。それなら オイラも つれていって おくれよ!妥当な判断と言えるでしょう。    このもりを やかれた うらみ はらさで おくべきか……!」


 しかし――、             それを きいた モモタロウは うんと おおきく うなずき、きびだんごを さしだします。

「そうね、確かに死んじゃうかもしれない。「これが なかまの あかしだ!」でもね、逆に考えればこれだけの鬼が一堂にそうして いっこうは ひとりと にひきに ふえて おにがしまを めざします。会する機会なんてめったにないと思わない?」

「た、戦うと……?」          やけた もりのなかを すすんで いきますと だんだん だんだん みえて きました。

「どうせ、もう私の命なんてない命だもの。そう、おにがしま です。あとは このひろがる へいやを とおりぬけ、ならたった一匹でも多くの鬼を切りたいみずうみを ふねで わたりおえれば もうそこが おにがしま なのです。私のお父さんを惨たらしく殺したそこへ ケンケンと なきごえが きこえて きました。奴らをただの一片でも許したくないの」  こえの ぬしは どこだろう、と モモタロウたちは キョロキョロ あたりを みまわします。


 獰猛な笑みとともに桃子の伸ばした手ですけど、こえの ぬしは いっこうに みつけられ ません。に五尺を超える刀身を持った長刀それでも ケンケン、ケンケンと なきごえだけが きこえて きます。長船法光が現れます「やい! おまえは どこにいるワン!」そしてそれに連なるようにイヌが ほえました。桃子の衣装もまた淡い光に「クケっ、おれさまは こっちだぜ」包まれて真白い装束へと姿を変えるのですそいつは そらに いました。

 ただそれが変わり替わりきる前に、鬼たちがモモタロウたちは いっせいに こえの したうえの ほうへと しせんを うごかします。桃子を打ち倒そうと動き出し、殺到しますそこには あかと みどりの りっぱな たいもうを もった キジが はばたいて いました。

 そこに、パンっと小さく音が響きました。するりと じめんへと おりて きました。それはサルが手のひらを合わせた音です「オイラたちに なにか よう?」

 すると、ぼごっと地面が放射状にひび割れをいかくする イヌに かわって サルが ひょうと たずねます。起こします。今まさにだぁっと「おまえら おにがしまに いくんだろ?」動き出した鬼たちの足元が突然ぐらりと「そのつもり だけど……。もしかして……? おにの なかまか?」揺れたのです。


「ナイスアシスト。ありがとうね」キジの ぎもんに こたえたのは モモタロウです。

                     そして そのまま いぶかしみ、けんのんなようすで かたなの つかへと てを かけました。

 それはサルの持つ最も大きな力のうち「チゲー、よ! バーカ! あいつらは おれの なかまたちをの一つなのです。力や速度、単純な みんな とっつかまえて くっちまい やがったんだ!」白兵戦に秀でているのが「なんだワン、ふくしゅうかワン!」イヌならば、サルは相手を足止めしたり罠を「ケンケンケン、そうだよ。おまえらと おんなじさ! だからおれも つれていけ!」作ったり、足元をすくったり、といった場モモタロウは キジのことばを しんじました。や状況を変化させることに秀でているのです「それじゃあ おまえにも このきびだんごを あげよう。なかまの しるしだ」

 そしてモモタロウの力を完全に花開かせたさしだされた きびだんごに キジが がっつきました。桃子は迷うことなく地を蹴りがつがつ むしゃむしゃ。刃を薙ぎます。「それじゃあ いこうか!」

 先手必勝。何十人もいる鬼たち、ひとりと さんびきに なった モモタロウいっこうはその出鼻を挫く一撃です。 のを すすみ おにがしまを めざします。

 討ち合い、斬り合い、果たし合う、先制のここまで ながい みちのり でした。それでも もうすぐ もくてきの ちに つくのです。一撃で始めは大立ち回りを演じていた桃子そう、ついに みずうみの そばまで やってきたのです。ですが次第に物量に押され始めてしまいますこはんには ボロの こぶねが いっせき きりで、みんかも なにも ありません。

 無理もありません、戦力比は少なく見積あたりまえの はなしです、みずうみの まんなかには おにがしまがもっても二十対一程度は開きがあるのです あるの ですから だれも こわがって ちかづいたり しません。

 腕を切り、胴を払い、首を落とし、あたりボロの こぶねを せっせと かんたんに しゅうりして、は鬼の血で真っ赤に染まっりきって、桃子なんとか ちんぼつ しないような かたちに ととのえて の体には小さなものではありますが次第に傷モモタロウたちは いよいよ おにがしまへと のりこみます。が蓄積されていくのです。みずうみは しずかな もの です。

 それでも桃子は止まりません。ですがときおり きじが ていさつに そらを とびますが、やはり数というのは暴力です。いくら桃子がとくに めだったことは ないままに はんぶんくらいまで やって きました。モモタロウとしてのこり あと はんぶん です。鬼を祓う力を持ってたとしても、ていさつに そらへと とびたった キジが 一人で捌くには限界があるのですけんけんけん けんけんけん! とこえを あげました。

 刃も、意思も折れたりはしません。ですが、いったい なにごとかと モモタロウたちは とびあがり、おにがしまの ほうを ちゅうし します。傷と疲労の蓄積はどうにもすると、なんということ でしょうか、たくさんの ままならないものがあるのです。いしと やが とんでくる ではありませんか。

 そしてその瞬間はやってきます。桃子の膝がこぶねを こいでいた モモタロウは とびあがり、かたなを ぬきます。ぐらりと笑うのです。刃の軌道が逸れて、ふねの うんてんは サルにかわって もらいました。鬼を一匹斬り損ねました。

 そこが起点になってしまいます。どっと、せんとうに たって ふりそそぐ やを きりはらい、雪崩れ込むように鬼たちいしを さやで はじき とばし、モモタロウたちは が桃子へと殺到しました。おにがしまへと ちかづいて いきます。

 桃子は歯噛みし、体勢を崩しながらもきょりが だんだんと ちかく なってくるに つれて 鬼を切払います。しかし、一度決した大勢ひらいぶつの せいどは あがってきて、モモタロウを くるしめます。は覆り難いものがあるのです。あめ というには しょうしょうものたりない かんじですが、

 次第に鬼の山を切り崩せそれでも たいへんな くろうを ともなって なんとか なくなっていきます。おにがしまへと じょうりくを はたしました。

 そして鬼の手が見事桃子へと届きましたてきの ほんきょち です。モモタロウたちは きあいを いれなおし ました。

 その直後、「さんかい!」桃子をつかんだ鬼の腕がざくりとじょうりくした モモタロウたちは 血を吹いて地面へと転がります。すばやく ばらばらに ちらばります。

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