280620 ネトゲにより安全を確保し、所属・承認を得て、自己実現を達成する

ネトゲにより安全を確保し、所属・承認を得て、自己実現を達成する


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岡田尊司 「インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで」より引用


(マスローの5段階の欲求分類を踏まえて)

インターネットゲームからプレイヤーが得ている満足は、次の3つの要素に還元できるだろう。

①非日常的な興奮や昂揚感を味わい、現実の厭なことから逃避する(生理的欲求、安全の欲求)

②仲間たちと気軽な会話を楽しみ、つながりを感じ、仲間から認められる(所属の欲求、承認の欲求)

③技術やレベルを上げたり、戦果を挙げることで、達成感や自己効力感を味わう(自己実現の欲求)


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 この著作は精神科医が書いたネットゲーム依存症に関する研究あるいは治療成果をまとめた本です。ネトゲ依存症に悩んでいて克服したい方、あるいは身の回りの人が身を崩しつつある方、その一助になると思うので、手にとって見てください。


 今回はネトゲに関する話です。

 私はアラサーのどっぷりゲーム世代なわけですが、ファミコンからのゲームの変遷を一通り体験しています。私にとっては、ゲームの変遷は、遊びの進化の過程でした。ゲーム媒体の技術の進化がめまぐるしく、ゲームを買うたびに遊びの進化を体験できました。白黒がカラーになったり、音源が高度化したり、2Dが3Dになったり、美麗ムービーが挿入されたり。

 しかし、ゲームの変遷=技術的進化というわけではなくなってきています。最近のスマホゲーは遊びの内容的にはプレステあたりで実現できるレベルなわけで、グラフィックや表現技術は進化していないのです。そうなったのはいつからでしょうか。それは多分ネットゲームが現れてからです。ネットゲームが現れてからは、どうにもゲームは「いかに夢中にさせるか」という課題に注力するようになってきたと思うのです。言い換えると、「いかに依存させるか」ですね。これ以上の技術的進化は高コストになりすぎ、また大方進化が行き着いてしまい、別の手段で集客しようと試行錯誤した結果なのかなと思います。

 育ってきた世代的には、今の流れはあまり嬉しくないです。パチスロにも似たガチャ要素などの依存的仕組みを増やせば、そりゃあ夢中になる人も心理学的に増えるのでしょうが、なーんかうまく騙しているだけに思えて違う気がするのです。もっと正攻法的に素晴らしいものを作って夢中にさせてほしいと思ってしまいます。いやまぁ満足度を増やすという意味では、今も絶え間なく努力しているということではあるんですけどもね。

 とはいえ、こういった流れになっているのは、ゲーム業界だけではありません。音楽業界もこれに近い、人間心理的アプローチになってきています。そりゃあ曲の音の段階や宣伝手段は限られているわけですから、技術的な斬新さの限界は早めに訪れますよね。CDの売り上げよりも、ライブや配信に企画イベントなどの参加型コンテンツに中心がシフトしてきています。

 技術的進化は一種の成熟期で、今度は心理的進化とも呼ぶべきアプローチに、集客方法がシフトしているのかもしれません。


 私は物事の仕組みを理解しようと努めるタイプなものだから、夢中になりつつも何で夢中になるのかを理解して相対化して冷めてしまい、定期的にネトゲをやったりやらなかったりを繰り返しています。面白くて夢中になるように作られてるから、やったらやったで面白いのですけど、創作もしたいので結局離れたりの繰り返しですね。 


 とはいえ、『依存による生活破綻』や『依存によるメーカー側からの一方的搾取』を回避できるのなら、大きな可能性を感じます。「ソードアートオンライン」の世界が表現しているように、いつか五感を再現したゲームが生まれるかもしれません。既に視覚に関しては、VRの実現が近づきつつありますね。

 そうすれば、そこで教育面でより効率的な運営ができますし、仕事のオフィスだってそこに成立するのではないでしょうか。VR予備校とかVR会議で十分だと思うのです。VRカウンセリングやVRお見合いで、心理的コミュニティも築きやすくなるでしょう。社会的インフラの整備という意味では、進化してほしい分野です。


 ああ、そうそう創作的には、このマスローの欲求5段階はとっても大事ですよ。

 簡潔に言うと、ご飯を満足に食えないうちは創作なんてしてる場合じゃねーだろ!というお話です。つまり原始的欲求を満たしてから、自己実現などの高次の欲求に移行していくというお話です。確かにこの段階を無視すると、読者からは疑問を呈されますよね。

 それに何で今このコンテンツが流行っているかというのを理解していくのも大切です。他の分野であっても、流行っているものは何か優れたものや、人の心を掴むものがあるのですから、まずはその魅力を探ってみてください。いろんなものに価値を認めてこそ、個々人の作品の幅が広がるきっかけが生まれると思うのです。

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