最終部 家路
楓さんが部屋を飛び出した。めんどくさくなっちゃったのかな…。でも迎えに来るって…どうしたんだろう…。突然出て行って…。しかも、なにを考えていたんだろうか…。また独りぼっち…でも…ちょっと違う…。
家の中の色が、いつの間にか色を取り戻していった。あの木の温かみが戻ってきた。確かに独りぼっちだったけど…怖くはなかった。私は待っている…待っている…。ここで待っている。私はここにいる…聞こえないかもしれないけど…声を発している。
えす…おー…えす…
救難信号。誰か助けて。だれか…
どくん…どくん…。心臓の音…?それとも…ココロの音…?心音。どくん…どくん…どくん…。
ココロの叫び…。心音が強くなる。苦しい。どくん、どくん、どくん。
すると、どこからともなくラッパの音が鳴る。
そっか…今日は戦争の日だったね。だから行っちゃったのか…。また明日…会えるかな…。帰りたい…でも不安…。また嫉妬しちゃうかもしれない…また居場所をなくすのが怖い…独りぼっちはいや…。怖い…。
[洗面所へ走る。少し戻してしまった。気分が悪かったというより…何かを吐き出したかった。なんだろう…マイナスのココロ…?急いでパソコンの前へ戻る]
画面には変化がなかった。でも…動けなかった。ぎゅっ丸まる。耐えられない。重力…いや水圧に似たような押しつぶしてくる空気。ぐしゃりと潰されそうになった。
どくん!どくん!どくん!
そのとき、ガチャリと扉が開く。頭を上げると…。
楓「おまたせ」
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どっと押し寄せる光。扉の向こうはまばゆい光。色。
みんないる。みんなが…みんながここにいる。ギルド…ギルドのみんながここにいる。
ダンテハーツ「迎えに来たぜ」
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大剣を肩にのせ、入り口によりかかっている。キザだ…。でもうれしかった。
フェルト「わけも話さないで急にいなくなっちゃうんだもん!心配したよー!」
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腕を組んでぷっくりと顔を膨らましている。でもどこか嬉しそうだ。
悠気「ですです。まだ何にもかかわっていないのに、突然いなくなってしまうのは寂しいですよっ」
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ごめんなさい。でも、そういいながら来てくれるのはうれしい。
お魚マン「そうそうー。やっぱりギルドには花がないとね!」
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貴族ぷりん「それな。じゃないとホモばっかりになるからな」
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まったく…こんな状況でよく軽口を…でも…楽しそう。
あれ…一人足りないと思った時だった。外で何かを引きずる音がした。
だいごろう「ごめん遅れたわ。二人乗りの乗り物探すの大変だったよ」
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二人乗り…え…え…?
楓「今日は戦争の日でしょ?人数が足りなくてさ」
あははと照れ隠しをしている。建て前が苦手なんだな、この人。でも…本当に迎えに来てくれた。
楓「さあ、帰っておいで」
彼は私に手を差し伸べてきた。私はその手を、ゆっくりと握る。
======[その時だった。パソコンの画面から、光が飛び出してくる。あふれだすように。その星のような輝きは、私の灰色だったリアルに色彩をつけてくれた。星々は私の部屋を駆け巡り、鮮やかな色を付けていった。]==============☆
喜びもつかの間、拠点の耐久値が減っていく通知が画面上に表示される。
ダンテハーツ「おっと位置がばれたか」
フェルト「いそご!!幽奈さんも一緒にw」
私はみんなに手を引かれ、光あふれる外にとびだした。
なんだか懐かしい、あの私が初めて見た揺れる草木があった。緑に生い茂る植物たちが。雄大な自然が。
だいごろう「のって」
遠慮なくのる。早く現場へと向かわねばならない。
無意識にベルを鳴らす。楓さんに。
幽奈「あの…ありがとう…」
楓「ううん。仲間でしょ?」
幽奈「うん…。そうだね…。でも、また病むかもしれないよ…?」
楓「でも幽奈さんは今日、孤独ではなくなった。それは間違いない事実だよ」
幽奈「うん、そうだね…」
孤独ではない。それだけで十分だ。もう独りぼっちじゃない。私が私としてここにいて、それを認めてくれる人がいる。それだけでうれしかった。
すごいスピードで野原を駆け抜けていく。なんだかこれも懐かしい。ああそうだ。最初のボスの時だ。あの時もこんな風に感じたっけ。懐かしい。駆け抜けていく。風のように。
現場へと到着した。残念なことに拠点兵器はすべて潰されていた。このまま押し返すのは厳しい状態だ。
幽奈「押し返せるかな」
貴族ぷりん「どうにか押し返すんさ」
みんな一斉にとびかかる。数でも、火力でも向こうのほうが勝っている。私の立ち位置はないように思えた…。
でも…私にだってできることはある。あえてあまり威力のない技を敵に放ってみる。すると敵は私のほうを向いた。計画通り。敵は真っ先にこちらへと向かってくる。それを補助するもう一人の敵も同様に。二人の敵が釣れた。私は逃げ回る。つかず離れずの距離を保ちながら、いつでも攻撃できるぞと武器をちらつかせる。向こうだって殺されるのはデメリットしかない。それに拠点を攻めるならなるべく数を減らして盤石の状態で攻め崩したいところだろう。
その裏をかく、どうせ私のステータスなんか相手には見えない。このクラスは硬いことで有名なクラスだ。相手からしたら早くつぶしたい敵であり、また早くつぶさなければならない敵だ。
敵を引き付ける。なるべくステータスがばれないように攻撃を避けつつ。
良し、向こうは片付いた。味方が砦に張り付いていた敵を倒したようだ。誘い込んだ二人も味方の死に気づき、砦へと戻る。残念ながらそこには回復して盤石の姿勢で敵を迎え撃つ見方が待っている。
果たして次の防御が同じ手で通じるかどうかといったら厳しいところだ。
なるべく敵に目障りと感じさせるような立ち回りを…
潰しあいに潰されあい。自分の役割を見出していく。私のできることは、せめて敵を引き付けておくこと。かませ犬だって仕方がない。でも負け犬だけはごめんだ。
続く戦い。そしてついに。
楓「やった!さすが大砲」
私たちが戦争に勝利した。
[今までの私は臆病だった。人と話すことは苦手だった。独りぼっちが怖かった。]
でもここに仲間がいる。少なくとも今は寂しくない。誰にだって寂しいときはある。それが私は極端なだけ。
でもみんなは私に付き合ってくれるだろうか…。
ううん…。私は私の足で歩く。辛く苦しいことだってたくさんあるはずだ。みんなを傷つけて糾弾されて、落ち込むこともあるかもしれない。でも、そこには誰かしらが助けてくれる。私は私。私のココロは私だけのもの。
でも私という存在は、みんなの中にある。
ここに私の、新たな
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