第4話

花房灯。

はなぶさあかり、横に並べられた写真を見ている彼はどこか人間味のないふわふわとした雰囲気を纏っている。

「なに?」

『コイツ手ぇ出すのはやいんだから』

ふと伊崎に言われた言葉を思い出す。確かにこの優男なら女の子にもモテるだろう。

「ポストカード」

「…へ?」

「もし気に入ったのがあったらポストカードあるから、」

どうぞ。と ハガキサイズの写真の入ったかごを差し出す。

淵に貼られた “1枚50円”の文字におお、と笑う。

「写真部も商売するんだ」

いつの間にか側にきていた黒髪の彼女は面白そうに笑って その中から1枚を抜き出す。

それを指で挟みボクに首を傾けて見せる。

「全部50円?」

「全部50円」

ボクの答えにへえ、とどういう意味を含んでるかわからない返事をして隣にいるファンキーな彼女に 買う? とかごを示し、

隣の彼女も気に入ったものがあったのか手に取る。

「はい、100円」

「おれも。50円」

右手に乗った生ぬるい金属が妙に現実感に薄い。

「もっと、お金とっても良さそうだけど」

「素人作品に払ってもらうだけありがたいよ」

缶に小銭を入れながらのボクの返事に 問いかけた彼女とは違う花房がすこし不服そうに顔をしかめる。



「君らにも感謝してる。ありがとう」

たぶん、伊崎がいなかったらこの人たちはここにこなかっただろうし 、素人のポストカードにお金を払うこともしない。

けど、一回 関わったら それに入り込んでくれるオトモダチはきっと優しい。

「そろそろ伊崎が限界みたいだ」

さっきから暇があれば扉の向こうから伊崎が 恨めしそうにこちらを見ている。









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