第2話

意外とカンが鋭いのかもしれない。

「……まあ」


「え、うそジョーダンだったのにえ、てかまだ名前1回も呼ばれてないんだけど」

思った以上に面倒くさい人間だ。一応気を使って普段のトーンで答えればあからさまに傷つきました、というような顔をしてくる。

あ、やばい次の展開が読める。

「え、おれの名前わかるよね」


わからないとか言われたらおれさすがに泣く…とかなんとかぶつぶつと言う、のは構わないがボクの顔をガン見しながら言うのはやめてほしい。

「のざき」


「っおしい!おしいよ?!まじで?ねえさすがにひど」

「いざき」



「…テキトーに当てはめて当たったとか許さないから」

当たったのか。別に全部わからなかったわけじゃない。『ざき』は印象に残ってたんだ。コイツの仲間達がでかい声で呼ぶのが聞こえるから。

「下の名前は」

「….唯」


期待していなかったのか嬉しそうにボクの手をガッと掴む。やめてほしい。不良に絡まれてるやつみたいじゃないか。

まだ手をつかんで離さない。目をきらきらさせてなんで?なんで知ってるの?たまたまとか許さないよ?と訴えかけてくる。

「…クラス一緒じゃ」

「言わせねえよ苗字間違えたの誰だよ」

もうコイツ面倒くさい…嫌だ話したくないめんどい

「幼馴染みと名前一緒なんだよ字は違うけど。印象に残ってたから覚えてた」

それだけ。と言って手をやんわりと外す。

案外簡単に離してくれた。


「へー幼馴染みいるんだ、あれだろ 世話とか焼いてもらってんだろ」

机に伏せながらおれも女の子の幼馴染みに世話やかれたかった朝とか起こしてもらいたいお風呂一緒に入りたい……とぶつぶつぶつぶつ。

まずそれは幼馴染みの域じゃないし、

「ボク女の子の幼馴染みなんて言ってないけど」

「…男か…しょっぺーな…」


伏せた体を起こしながらわざとらしく苦い顔をする。勝手に勘違いして夢を持たれても困る。

だいたいもし女の子の幼なじみがいても年頃になったら自然と疎遠になるものじゃないのだろうか。女の子の友達すらいないボクからしたら全く見当もつかないことだが。


コイツはひとの話を聞かない質らしい。頬杖をついてぼーっとしている。

なかなか人もこないしこの不良も一役買っているだろうし。逃がしたらペナルティ、でも逃がさないことにはひとはまずこない。面倒くさいことに巻き込まれた。


ふと 視線を感じ、そのほうを見れば派手な女の子と男の子のグループがこちらに視線をやっている。横の不良のトモダチかもしれない。

「あれ伊崎のトモダチ?」

頬杖ついてる肘を押すと相当驚いたのかこちらを睨む。こわこわ。

「んえーあー そうだ。あれ、回れないって言ったのに。ちょっと行ってくる」

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