不良と仲良くなる方法。

風上イヌ

第1話

見慣れた制服、ちびっこ、ほかの学校のグループ。目の前を往く人々をぼんやりと見つめながら今の状況をのんびり整理していく。


「ねえ、コレ退屈じゃないの?」


「…まあ」


「去年もこんなだったの?」


「……そうだよ」


なんでボクは1回も話したことのないこの不良と肩を並べているのだろうか。自分のテリトリーである写真部部室で。


ことの発端は今日の朝。顧問である阿久津は文化祭の最終準備をしていたボクの元へいま隣にいる不良を押し付けたのだ。

「そいつペナルティだから!逃がしたらお前もペナルティだ」

意味がわからない。部員ふたりしかいなくて準備が手間取るというのに。理由を聞こうにもこいつを置いてさっさとどこかへ行ってしまった。

隣のヤツは椅子をひっくり返して背もたれに腕を投げ出してだらけている。ただでさえひとは来ないというのに金髪ピアスのせいで余計人が避けていっているように思う。


はぁ…


こっちはため息を漏らしているというのに隣のヤツはのうのうとあくびをしている。


「ため息すると幸せが逃げるんだってーおまえいま一個逃げた」

幸せを一個二個と数えていいのかはわからないが。不良でもそんなことを言うのかと少し驚きだ。

「余計なお世話だ」

「呼びかけとかしねーの?人全然入ってねーじゃん。」

それこそ余計なお世話だ。

少しムッとしたのが出たのケタケタとボクの顔を指さす。


「そんな顔もすんだなおもしれー」

ボクをどんな人間だと思っているのか気になるところだ。

「ああ、お前もそんなお茶目な人間だったんだなおもしろい」

僕の言葉になにが、と首を傾ける


「うしろ、ぼさぼさ」

「うわぁ…さっきあっちゃんに連れてこられたから」

うげぇと眉間にシワを寄せる。

そうだよ、そもそもなんでボクは一生関わらなかったであろうコイツと話しているのだ。

コイツは阿久津になにをしたのだろうか。


「お前、イヤでしょ」

「なにが?あとおまえって言わないで名前あるから」

ボクの返答に口を尖らせて再び口を開いた。



「…恵ちゃん」

「やめろ」

「なんで?!けいちゃんかわいいよ?!」

「こっちがなんでだよ。」


すずきけい。中学に入ると 鈴木系、特徴のない普遍的な人間という意味なのか全国の鈴木さんに申し訳ないあだ名で呼ばれた。


「だからー恵ちゃんはおれと話すのイヤでしょって言ってんのー」

「これだけ話しかけといてそれ言うか?」

「別にいいじゃん気になったんだもん」

不良…キャラ崩壊してるけどいいのか…?


「恵ちゃんこそどうせおれのこと 頭の中で不良とかパツキンとか言ってんだろ!!」

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