凶報三連 第三弾
「……それで? 最後の話はどんなんなん?」
開き直った俺は、自分でも無愛想やと思う声でリューヒに問い掛けた。
さっきのばあちゃんが言ーた最後の一言は、例え冗談でも限度がある。
言ってえー事と悪いことがあるんや。
「も―――みっちゃんのーせーで―――龍彦チン―――ご機嫌斜めやんか―――」
「まー確かに―――さっきのは言い過ぎやったかな―――」
「も―――みっちゃんったら―――」
全く悪びれてない二人が間の延びた言葉で会話を交わしてるんを見てたら、余計にイライラした反面、この二人にイラついてもしゃーないと深呼吸して落ち着きを取り戻した。
話は全部聞く。
まー、この後に控えてるんも悪い話やけど。
けど、気が
すぐにでもここを出て、利伽の元へ駆け出したいくらいや。
「ほら―――リューちゃん―――。龍彦がイラついとるから―――早よー本題に入ったげ―――」
放っといたら和やかな雑談会が行われそうな流れやったけど、流石に気ー効かせてくれたばあちゃんがリューヒを促してくれた。
「はーい―――それでは―――最後の―――『悪い話』―――発表で―――す」
三度、リューヒはパチパチと手を叩き、一人キャッキャッと盛り上がった。
それを覚めた目で見る俺と、微笑みながら溜め息をつくばあちゃん。
「でも―――これは―――今悪い話やなくて―――場合によっては―――悪い話に―――なるかもって―――話です―――」
―――は!?
今はまだ悪い事は起こってないどころか、悪い話になるかも知れんって話か? ……でも……。
「なぁ……それって、今聞かなアカンの?」
何よりも
正直、ここでのんびりと話聞いてる気分やない。
「龍彦―――わざわざ今話す意味―――考えーよ―――」
気が急いてる俺はムッとした雰囲気を醸し出してたんやろーけど、それをばあちゃんに
「あ、ああ……悪ぃ……」
そうやった。
わざわざ今話すには、多分何か意味がある筈や。
「フフフ―――多分―――この話は―――すぐに―――終わるよ―――」
リューヒも気にした様子はなく、俺を落ち着ける為かそう前置きして話し出した。
「実は―――ビャクチンの―――事やねんけどな―――」
―――また話、あちこち飛ぶなー……。
今度はビャクかいな。
あいつが一体何したんや?
「龍彦チンは―――ビャクチンとの―――婚約の話は―――もう知ってる―――?」
……ああ……確かそんな話をビャクはしとったなー……。
「……知ってる。ビャクに聞いたわ……」
そう言って俺は、ジロリとばあちゃんを見た。
その瞬間、ばあちゃんの肩が僅かにピクリと反応した。
表情は相変わらずのニコニコやけど「あー、完全に忘れてたー」感がしっかり滲み出とるわ!
リューヒはそんな事に気ー取られる事もなく話を続けた。
「その―――ビャクチンなんやけど―――龍彦チン―――あの娘には―――十分―――注意してな―――」
「―――は!?」
意味が解らんかった。
注意て、何を注意すんねん?
確かにビャクは、勝手気ままで言ーことも聞かんし、良ー利伽とも口喧嘩しとるけど……それだけや。
注意するっちゅーほどやない。
「あの娘の―――基礎知識は―――日本の歴史―――この数百年に―――集約―――されてるのね―――」
数百年とはまた幅広いな。
まービャクも70年生きてる言ーてるし、ビャクの親なんかはそれこそ何百年も……。
「って、数百年!?」
最近の俺の周辺では、何十、何百、何千年の話が溢れ返ってた。
それこそ目の前のリューヒは、齢億年を越えとるらしい。
だから数字に麻痺してたけど、日本の歴史で数百年っちゅーたら、その文化だけでもかなり幅広いんちゃうんか?
「そうやねん―――特に―――倫理観が―――古くて―――事婚姻相手の―――ライバルに関しては―――容赦ないねん―――」
婚姻関係……っちゅーたら俺やな。
そのライバルっちゅーたら……ひょっとして、利伽の事か!?
そらー、何かにつけて利伽とは言い争ってるけど、そんなんただの“じゃれあい”やと思てたわ。
それが冗談やなくて、結構本気やったんか?
「でも、あれくらいで注意もクソも無いやろー?」
言ーても、たかが口喧嘩や。
とっくみあいにでもなるんやったら問題やけどな。
「ビャクはな―――お前と結婚するて―――もー決めとるんやで―――。むかーしの結婚ゆーんはな―――
邪魔者……排除て……そんな大袈裟な……。
―――!?
「ち、ちょー待てよ! そしたら利伽と
「あんだけ近くにおったんやで―――。気付いてなかった―――……ちゅーことはないやろな―――」
あいつ!
勝人がヤバいって知ってて、利伽を排除する為に、知らんぷりしやがったんか!
考えてみたら今回の事は勿論、俺が
―――「良ーから! これ以上関わったら、絶対碌なことにニャらんから!」
あれは俺がトラブルに巻き込まれるっちゅーだけやなくて、自分が厄介事に巻き込まれるんを嫌ったセリフやったんや。
確かに蓬は女の子や。
俺から見たら、
けどビャクは蓬を女性と捉えて、俺に近付けんよーにしたんちゃうか?
今となってはそう思えた。
「龍彦―――勘違いしたらあかんで―――。時代が変われば考え方も変わるんや―――。あんたには理解出来へんかも知れんけど―――ビャクにとっては当然の事やったんやで―――」
確かにそーかも知れん。
今でも男女の仲は一筋縄ではいかんちゅーことやのに (良ー知らんけどな)、近代……戦国時代ともなったら、想像も出来んわ。
けど……。
「ばあちゃん、わかった。けど、今は昔やない。ビャクには俺から言い聞かせてみるわ」
今回は兎も角、今後もそんな考え方やと、おちおち利伽と会話も出来ん。
少しでもビャクの意識を変えることが寛容やと、俺は思った。
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