凶報三連 第二弾(下段)

 それにしても気になるんは、精神支配を受けて化身の僕になってもーてる勝人かつとの動向や。

 ……って、そういえば勝人の奴、何か俺に言ーてたな……。

 何やったっけ……?



 ―――何や知らんけど、もっぺんもう一回改まって会いたい言われてなー。放課後一旦帰ってから、また会う事になったんや!



 ―――!!


「ば、ばあちゃん!」


 勝人の言葉に気になる、すっげー嫌なフレーズを思い出して俺は慌てた。

 急に俺が大声……に聞こえる念を発して、ばあちゃんとリューヒは怪訝な顔をして俺を見た。


利伽りか……利伽の居場所って、直ぐに解るんか!?」


 俺の脳裏には嫌な想像が渦巻いて、慌てずにはいられんかった。


「なんや龍彦いきなり―――そんなんすぐわかる―――……ん―――? あら―――利伽ちゃんなんでこんなとこにおるんや―――?」


「ほんまやね―――ここは―――確か―――“勝尚寺かつしょうじ”の―――あるとこやね―――」


 か……勝尚寺!?

 そこは確か、勝人の……家や!


「今日勝人が、放課後に利伽と会うー言ーてた! 利伽がわざわざ、勝人に会いに行ったんや!」


 利伽も勝人が、化身に操られてるなんて知らん筈や。

 いや……。



 ―――それより、昼間タツが連れてきた吉田君やねんけど……。



 ―――今日、吉田君に初めて会った時な……。



 ―――吉田君に会った時……。



 違うちゃう

 利伽は勝人の異変……っちゅーか違和感に気づいてたんか!?

 それを俺に言おう思て……。

 それを俺が聞かんで、利伽は……一人で!?


「利伽ちゃん―――吉田って子の異変に気付いとったんやね―――。ほんま―――勘と洞察力の鋭い子ーやで―――。それに比べてこの龍彦アホは―――……」


 グッ……返す言葉もない……。

 けど、今は反省やら後悔してる場合でも、ここでじっとしてる場合でもない!


「ばあちゃん! 俺……」


「龍彦! 落ち着き!」


 ―――ゴォウッ!


「あら―――まあ―――」


 俺が取り乱しすぐにでも利伽の元へ動き出そうとしたその矢先、ばあちゃんの怒声一喝、凄まじい威圧を孕んだ霊圧が周囲に放たれた。

 突風と見紛うほどの強烈な霊気塊が、俺を吹き飛ばそうかと言う程叩き付けられた!


 ―――その威力は、ばあちゃんの隣に立ってたリューヒにも及び。


 ―――リューヒのヒラヒラフリフリの巫女服が、そらーもう、盛大に風になびいた。


 ―――胸元のえりは大きくはだけ、たわわな胸元があらわになり。


 ―――太ももまでしかない緋袴は大きく捲れめくれ上がった。


 ―――瞬間!


 ―――俺の脳内は、時が緩やかに流れるこのフリュークスよりも、更に時間をスローにした。


 ―――極限の精神状態に突入した人間が、時間を遅く感じるっちゅー……あれや。


 ―――そして俺はその思考世界で、冷静な考えを巡らしとった。


 ―――リューヒって、下着着けてないんちゃうん!?


 大きくはだけた胸元にも、盛大に捲れ上がった緋袴の下にも、下着の様な物は目に写らんかったんや。


「……ほんま―――……龍彦には―――霊圧より色気の方が効果絶大やな―――……」


 俺はばあちゃんの呆れ声にハッとなり、漸く脳内世界から帰還した。


「ちょ、ば、な、何言ーてんねん!」


「ウフフ―――龍彦チンも―――男の子なんやね―――」


 俺がリューヒを凝視してたんが二人にバレバレで、俺は顔を赤くして絶句してもーた。

 だけど (ばあちゃんと)リューヒのお陰で、熱くなってた俺の頭は冷静さを取り戻した。

 顔は熱くなったままやったけど。


「今あんたが動いても―――相手にとっては飛んで火に入るーやで―――。それにここでの時間は―――実際の世界と比べもんにならん位ゆっくり進んでるやろ―――。ここで聞くこと聞いてからでも―――十分間に合うで―――」


 そうやった……。

 ここでの時間は、現実には殆ど進んでないんやった。

 俺がやるべき事は、慌てて取り乱す事やない。

 全てを知った上で、行動しなアカンかったんや。


「それにま―――慌てたとこで―――アカンもんはアカンやろしな―――」


「ば、ばあちゃん!」

 

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