例えばこんな、一幕の終演
ばあちゃんの部屋に来た俺達は、ばあちゃんを前にして正座をして対面していた。
不信感が押さえられへん俺達とは対照的に、ばあちゃんは相変わらずニコニコした笑顔でこちらを見てる。
さっきまでの念話でのやり取りを冷静に考えて、今夜の事はほぼ間違いなくばあちゃんが仕掛けたもんや。
それも俺と利伽に、色々と教える為に。
確かに百聞は一見に如かず。
信じられへん事が起き、見聞きした。
ただ、それだけで終わらせる程、大した事ないっちゅー話でもない。
「あんた等も―――色々と聞きたい事あるやろ―――? 何でも答えたるで―――」
ばあちゃんが口を開いた。
俺と利伽は顔を見合わせて、どっちが先に聞くか目線で相談した。
「“接続の儀”を行った時に見た“フリュークス”っちゅー世界と、そこに居った“リューヒ”って人についてなんやけど……」
最初に口火を切ったんは利伽やった。
確かに一から順を追って聞かんと、全体の把握なんて無理やしなー。
「そー言えばあんた等―――リューヒに会うたんやね―――。あの子―――元気やった―――?」
「あ……? ああ……」「ええ……」
利伽の質問は、ばあちゃんの質問で返された。
俺達の返事が曖昧になったのは、ばあちゃんがリューヒの事を知ってるどころか、なんや親しい間柄に思えたからや。
ばあちゃんは、あんな不可思議な場所におる人とさえも親交があるんかい……。
「そうか―――。もー随分会ってないから―――どーしてるんか気になっとったんや―――。リューヒはな―――“竜洞界”……今はフリュークスゆーんか―――そこの管理をしてる神様やねんで―――」
俺と利伽はそれを聞いて絶句した。
あんな綺麗で間延びした、スタイルのえー姉ちゃんが神様なんか。
世の中、空想上の事が事実ってあるんやなー……。
「フリュークス―――地脈そのものを司ってる世界やねんで―――。地脈の属性によって―――その在り方も変化するんやで―――」
「地脈の……在り方?」
思わず俺はばあちゃんの言葉をなぞって呟いた。
在り方が変化するっちゅー事は……。
「そやで―――。
「真っ白くて……なんか暖かい感じやった……」
利伽が、その時を思い出すように呟いた。
俺が行った
「そうか―――。じゃーうち等がやって来た事は―――間違ってなかったみたいやな―――」
ばあちゃんは満足気に微笑んで、ウンウン頷いてる。
「それでそのリューヒって人に“接続の承認”っちゅーんをしてもらったんやけど……ばあちゃん、地脈の力ちゅーんは一体何やねん?」
「龍彦―――お前が考えてる通りやで―――。膨大な霊気で溢れる地脈に接続して―――化身や他の様々な事に対処出来るよーになる力の事やで―――。どん位の力かは―――あんた等も体験したん
確かに、接続した時に感じた力は相当なもんやった。
人間の力を超越したって、
「地脈の力は強いだけやないで―――。色んな風に使えるんや―――。身体能力の向上は勿論やし―――武器とか補助具何かの具現化も出来るんや―――」
「「武器?」「補助具?」
俺と利伽は同時に、別々のところに反応した。
俺としては、武器ってのに興味があった。
やっぱり化身と戦うとなったら武器とか防具やし、カッコ良ー剣とか槍を装備するのって、なんか憧れるやん。
男としてはそうでも、女性としては違うところに目がいくみたいやな。
「補助具って、例えば化身を捕まえる罠とか網とか……
利伽は戦わない様な道具についてばあちゃんに質問した。
「そやで―――。そんなんも具現出来るし―――空を飛ぶ道具かて作り出せるんやで―――」
「空!?」「飛べるん!?」
これには俺等は同時に声を上げた。
確かに地脈に接続した力は超人並みやけど、まさか空中を飛行出来るとは思わんかった……。
ここまで来たら、
「その辺の事もな―――ビャクにお願いしてたんやけどね―――。あんた等―――戦わんかったんかいな―――?」
その言葉で、ビャクはそっと顔を背けた。
どうやらあの流れの中で、すっかり忘れてたみたいやな……。
「
ばあちゃんはため息混じりにそう言ーった。
けど俺には、俺等には聞き捨てならん言葉があったんを、しっかり聞き留めとった。
「またの機会て……また化身が来るっちゅーんか!?」
「どーやろな―――。でも不知火山と八代山を守り―――化身から地脈を守るんが“地脈接続師”―――……今は“コネクター”言ーんかな―――うち等が先祖代々受け継いできた使命やからな―――」
今回は結局ばあちゃんの差し金やったから特に大事にはならんかったけど、
―――そん時俺は、ちゃんと戦えるんやろか……。
―――そんで俺は、ちゃんと利伽を守られるんやろか……。
―――ってゆーか今の感じやと、守られるんは俺の方やけどな……ははは……。
「とにかく―――今後あんた等二人は―――私の指示で修行してもらいますからね―――。覚悟しーや―――」
この時程、ばあちゃんの微笑みが怖かった事はなかった……。
俺が感じてる事を利伽も感じてるみたいで、冷や汗が止まらない俺の隣からは「ゴクリ」と喉を鳴らす音が聞こえた。
「それから―――ビャーク―――?」
俺を挟んで、利伽と逆の位置に座ってるビャクの体が、その言葉で大きく跳ね上がった。
「ひゃ、ひゃい!」
可哀想に、ビャクはこれ以上ない程怯えてもーてた。
返事をしたその声も見事に裏返ってる。
「あんたは今後―――不知火家で厄介になり―――。もう
辰昭とは俺の親父、恵美っちゅーのは俺のお袋や。
まーいきなり化身の同居人が増えるより、猫が一匹増えるだけの方が説明が省けて良いーよな。
ビャクはしきりにコクコクと頷いて了承した。
有無を言わせんばあちゃんの迫力に、今は冗談でも軽口は叩けんやろな。
もっとも、俺から見てもどっか抜けてるビャクが、いつまで神流を誤魔化しきれる事か……。
「神流には―――うちから時期を見て話しますからね―――。それまでは龍彦も利伽ちゃんも―――皆には秘密にしとくんやで―――」
俺の懸念も、ばあちゃんにはお見通しか。
「じゃあ―――今日はここまでにしときます―――。これからの修行は今までより厳しなるから―――覚悟しときーや―――」
ばあちゃんの笑顔から繰り出される冗談やと言わんばかりの言葉が、決して冗談やないっちゅー事を、俺等三人はしっかりと確信してたんや……。
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