青き月光に照らされる10月のこと-2


その言葉を口にした俺は今、未だかつてないくらい緊張している。動揺もしている。そんな俺の心の中ではすごいスピードで感情が走り回っていた。



うわ、どうしよう、言っちゃった。言ってしまった。どうしよう。てかなんで紫苑も白斗もなにも言わないんだよ。あれか?そういうことか?つまり全ては俺の勘違い?それならそうと言ってくれよ。どうしよう。なんなんだよ。でも翠…。いや、やっぱり…。…うあああぁ。



たった5秒で俺の心の中を巡った言葉。言葉を発してからもう30秒も経っているのに沈黙が守られている空気に耐えることが出来なくなった俺は、軽いパニックに陥っていた。


「まあ落ち着けって。」

「うん。」


俺の肩や頭をぽんと軽く叩きながら、白斗と紫苑が言った。


「や、やっぱり俺の勘違いだった?いや、ごめん、本当…。ははっ…。」

「おいおい、なにを勘違いしてるんだよ、青真。」

「落ち着けよ。白斗が説明してくれるから。」

「は、紫苑!俺任せかよ!」

「うん。」

「うん、じゃないだろ!」


軽口を叩いて笑いあっている白斗と紫苑に俺は取り残されてしまった。パニック状態を通り越して最早何も考えられなかった。


「緊張して真っ赤になったり、パニックになって真っ青になったり、ぽかーんとしたり、忙しいな青真は。まあ、落ち着けって。大丈夫だよ。なあ、紫苑。」

「うん。考えすぎ。青真の勘違いってわけじゃないし。俺らがどこから話していいか分からなかっただけだから。青真が鈍すぎて。」


「え…?」


俺はまだパニックから抜け出せない。何が大丈夫なんだよ。落ち着けと言われても益々モヤモヤが募るばかりだ。頭の中の迷路が複雑になっていく。早く答えを教えてくれよ。


「だ、か、ら、落ち着けって言っているだろう、青真。」


軽くニヤつきながら小突いてくる2人を見ていると、徐々に頭が冷めてきた。


「なんだよ。どういうことだよ。俺は言い出すのにすげえ勇気がいったんだぞ。2人でニヤニヤしてないで…、話してよ…。」


やっとまともな言葉を発することが出来たけど、語尾はだんだん弱くなっていくのが自分でもわかった。


2人は顔を見合わせてから、少し申し訳なさそうに笑って、俺の方を見た。


「悪かった。」

「ごめん、ごめん。いやあ、やっとだなあって。やっと青真が気付き始めたなと思って、嬉しかったんだよ。」

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