ACT05 プリプレイ 『完全に悪役だよね、それ』

下げ友:ところで、このゲームってどんな感じでキャラを作るんだ?


劇辛党:まあ、このルールブックに記載されているサンプルキャラクターを選んでもいいんだけど。


時間をかける少女:けど?


劇辛党:自分で全部作ることもできる。時間がかかるけどね。どうす……。


一同:(間髪入れず)イチから作る!!


劇辛党:わ、わかりました。


下げ友:で? どういう感じにキャラクターを作るんだ?


劇辛党:まあ、『特性能力』を選んで能力値を割り振ったり、技能を割り振ったり。


下げ友:能力値は、まあ、想像がつくけど、技能を割り振るっていうのは?


劇辛党:ああ。この『ガーデンオーダー』は技能の成功率は%(パーセンテージ)で決まるんだよ。みんな決められたポイントを与えられるからそれを%に割り振る感じで。


時間をかける少女:へー。成功とか失敗はどう決めるの?


劇辛党:いわゆる『D100』ってヤツだね。つまり、10面体のサイコロ2個を振って、10の位と1の位として読んで技能の成功率以下なら「成功」。成功率を超えちゃうと「失敗」だね。


時間をかける少女:ん。わかった! たぶん。


劇辛党:まあ、10の位と1の位がわかりづらくなるから、「10の位は20面体」「1の位は10面体」ってことでOK?


一同:おっけーでーす。


劇辛党:まあ、実際の判定とかは、やりながら説明していくとして。最初に能力値を割り振ってー。


時間をかける少女:割り振るんだ。ってどうやって?


劇辛党:この『ガーデンオーダー』では、【身体】【感覚】【知力】【意志】【魅力】といった5つの能力値がある。


腹黒演劇乙女:ふんふん。


劇辛党:全員、「15」「14」「13」「12」「10」を好きな能力に割り振って。そんで、3点のボーナスを加える。


時間をかける少女:あ、全員同じポイントなんだ。


下げ友:まあ、一人だけ能力が高いと揉めるしな。


寝落ちリア充:一人だけ低いなら大丈夫だね。


下げ友:いや、イジメだろ? それ。


腹黒演劇乙女:ボーナスの3点って、自由に割り振っていいの? 全部同じ能力値とかに。


劇辛党:構いませんよ。割り振った能力値を5倍した値を基本的な行為の成功判定に使います。


寝落ちリア充:え、じゃあ【身体】を「18」にしたら、成功率が90%じゃん! すごっっ!


劇辛党:でも、その分、「10」の能力値のところは成功率が下がりますけどね。


時間をかける少女:そっかー。全部高くなればいいのにねー。


劇辛党:まあ、そういうもんです。まあ、どの能力値に何点を割り振るかは、キャラクターのイメージですよね。


寝落ちリア充:でもさ、『特性能力』は《身体強化》なのに、【身体】が低かったら困るよね。


劇辛党:いや、普段はヒョロヒョロなのに、戦いが始まるともの凄い怪力を発揮するとかって言うのも魅力的だと思うけど。


寝落ちリア充:そっかー。確かにそうだね。


劇辛党:それ以外でも、様々な技能---例えば〈交渉〉とか〈知覚〉といった技能は、それに対応した能力値の3倍が基本%だったりするから、そういうのを考えて割り振ってみるのもいいよね。


時間をかける少女:そっか!


腹黒演劇乙女:どうしようかなー。


時間をかける少女:ところで、武器とかってどうやって選ぶの?


劇辛党:まあ、好きでいいと思うけど。


時間をかける少女:じゃあ、「槍」とかにしようっと。


劇辛党:ほう。「槍」! 渋いとこ行くねー。何でまた?


時間をかける少女:だって、間合いが長いでしょ?


劇辛党:まあ、そうだね。


時間をかける少女:だって、間合いが長い武器を使わないと、せっかくの《ウィンドバリア》が役に立たないじゃん。


下げ友:何だよ! イメージじゃなくて、単に有利なだけじゃねえか!


時間をかける少女:ふふふ……。そんなことも考えられないんですか?


下げ友:っていうか、そんなことしか考えてないんだろ。


時間をかける少女:ふふふ……。何とでも言い給え。


下げ友:まあ、ちなみに「槍」はないけどな。


時間をかける少女:な、何ですとぉぉぉーーー!(驚)


下げ友:いちいち、リアクションが年寄り臭いなー。


劇辛党:あ、いや「薙刀」があるね。


時間をかける少女:薙刀?


下げ友:いいね! 薙刀!


劇辛党:でも武器の射程が「至近」だね。


時間をかける少女:どういうこと?


劇辛党:ほとんどの白兵武器の射程が「至近」だから、「薙刀」だとお互いに「至近」距離で戦うから……。


下げ友:飛び道具から身を守る《ウィンドバリア》が効かないとゆーことに。


時間をかける少女:じゃあ、やっぱやめってことで!


寝落ちリア充:諦めるの、はやっっ!


時間をかける少女:じゃあ、「和弓」にしようっと。


下げ友:同じ弓でも「アーチェリー」じゃないんだ。こっちの方が威力高いのに。しかもオリンピック競技だし。


時間をかける少女:いいんですー! 弓はカッコイイから!


下げ友:同じ弓だっちゅーに。


劇辛党:じゃあ、弓道部とかか。


下げ友:まあ、弓道部でもないのに弓とか持ち歩いてたら、実際、マズいな。アーチェリーだとさらにヤバさが倍増って感じ?


腹黒演劇乙女:ホントだねー(笑)。


時間をかける少女:じゃあ、「弓道部」で。


劇辛党:了解です。


時間をかける少女:で。能力値なんだけど。【身体】も高い方がいいけど。でも【感覚】とかも高い方が良さそうだよね。


劇辛党:そりゃあ、まあ、ね。


時間をかける少女:【知力】が低くなるとカッコ悪いし。


寝落ちリア充:脳みそが少なすぎて、風が吹くとこっちの耳からあっちの耳に抜けていく感じだね。


時間をかける少女:ヤダー! だからって、【意志】が低いのもアレだし。何かねー。


劇辛党:それじゃ、弱点がなくなっちゃうじゃん!


時間をかける少女:フッ! 弱点はいりません!(宣言)


劇辛党:じゃあ、一番低く割り振った能力値にボーナスの3点を足せばいいじゃん。


腹黒演劇乙女:そうだそうだー。


下げ友:そうすれば、どれも平均的に! まあ、高いのはなくなるけど。


時間をかける少女:それは悲しいからヤダ。


下げ友:勝手だなー。


劇辛党:で、ほかの人は決まったの?


下げ友:まだー。


劇辛党:まだなのかよ! 一体、いつ決まるんだよ!?


時間をかける少女:今でしょ!


下げ友:だってさー。本、ないしー。あと、そのツッコミも古い。


寝落ちリア充:ボクは決まったよー。


下げ友:ナニィィ!! 決まったのか!? マジで!?


寝落ちリア充:うん。光のヤツ。えーと?「おぷてぃ……かる……いんたふぇあ……」?


下げ友:もっとスムーズに読めるヤツにしろよ。


寝落ちリア充:えーと……《光波干渉オプティカルインタフェア》! 読めた!


一同:おおーーー!(拍手)





 ちなみに『特性能力』は、漢字の横にカタカナ表記があるので、たいていの人は読むことが可能かと。





劇辛党:そうすると……「風使い」に「光使い」ですか。何か、主人公枠っぽいのが埋まっていくね。


下げ友:やべー。俺、何にしようかなー……(焦)。


腹黒演劇乙女:私ねー、《電磁操作エレクトロニックダンス》にするー。


劇辛党:おお、「電気使い」か。


腹黒演劇乙女:説明が簡単そうだったからー。


下げ友:そんな理由かよ!?


劇辛党:大事なことだよね。


腹黒演劇乙女:ねー。


劇辛党:そんなことより、下げ友。もうそろそろ、つーか、いい加減決めて欲しいんだがー。


腹黒演劇乙女:そうだそうだー。





 皆さんは、このガーデンオーダーでキャラを作るにあたり、一番の醍醐味は何だと考えているだろうか?


 能力値を決めるときか? ―――否。

 必殺技を決めるときか? ―――否。

 所持金を決めるときか? ―――否。


 否否否否否否イナァァァ!!


 ―――失礼。つい興奮してしまった。


 答えは―――そう、『特性能力』を決めるときである。

 下げ友くらいの古強者ヴェテランともなると、どの『特性能力』を選択するかについて熟考するのである。

 はっきり言って超堪能していた。

 それなのに、その至福の時間を奪われようとしていたのだった……。





下げ友:俺としては攻守に優れていると感じる《氷結能力フリーズバインド》に惹かれるんだが……。自力で氷の剣とか作れるみたいだし。


劇辛党:じゃあ、それにしろよ。


下げ友:まあ、そうなんだけどさー。他のPCとの兼ね合いとかあるじゃん。


腹黒演劇乙女:私はあんまり考えてなかったけど。


下げ友:えっと……、PC①の時間をかける少女が《風候操作》で。PC②の腹黒演劇乙女が《電磁操作》、PC③の寝落ちリア充が《光波干渉》かー。


時間をかける少女:あ、ねえねえ。私、弓道部だからね!


下げ友:それは部活の話だろ? でも、うーん……。じゃあ、同じ学校の剣道部の先輩とかにするかー。


劇辛党:そこは弓道部じゃないんだ。


下げ友:あ! 《精神投影イメージリアライズ》だと、相手を洗脳する《†ブレインウォッシュ》っていうのがある!


寝落ちリア充:それっていいの?


下げ友:フフフ……。当然ながら、登場する童女や少女たちを《†ブレインウォッシュ》して思いのままに操ることができるのだ……(ドヤ顔)。


時間をかける少女:ハ!? バカじゃないの?


腹黒演劇乙女:ちょっと、気持ち悪いんだけど。


寝落ちリア充:確かに。


劇辛党:完全に悪役だよね、それ。コンベンションだったら、出入禁止になる勢い。つーか、基本的にPCはヒーローなんだよ?





 ……そんなことはわかっている! わかっているんだよ。


 だが……、男子たるもの、そういう妄想を抱いたことが一度くらいあるだろう?

 そもそも、他人の心を操る能力を得た人間が、そういうことをしない方がおかしいのだ!



 でも、あれですね。そういう主張は主張として。


 こういう妄想を口に出した段階で、周りからの印象が最悪になるということを勉強できて良かったです。ヤッタネ!






下げ友:まあ、というのは冗談で。


腹黒演劇乙女:冗談にも聞こえなかったけど。


下げ友:剣道の試合で《†ブレインウォッシュ》を使って、対戦相手を洗脳して負けさせる。で、全国優勝している先輩なわけだ!


腹黒演劇乙女:しょぼっ!


寝落ちリア充:それってズルじゃん(笑)。


時間をかける少女:うわ、別の意味でサイテー。


下げ友:つまり、相手を洗脳できないと意味がないから弓道部ではダメなんだ。


腹黒演劇乙女:あんま、解説するほどの話じゃないね……。


下げ友:しかし、《精神投影イメージリアライズ》って他の『特性能力』より弱くないか? あ、でも他のキャラを回復させる能力があるのか。《†サイオニックヒーリング》だって。


劇辛党:そうそう。


下げ友:しかし、攻撃する時とかのイメージが湧きづらいっていうか。


劇辛党:そこは、ホラ、プレイヤーが頑張って演出するという……。


下げ友:うむ、つまり『瞳術』みたいな感じかなー。『バジリスク-甲賀忍法帖』的な。やべえ、カッコ良くない?


劇辛党:まあ、さっきのゲスい話よりは。


時間をかける少女:何でもいいけど、下げ友は傷を治せるヤツにして! 私が攻撃するヒトだから!


下げ友:アッハイ。


劇辛党:じゃあ、下げ友は《精神投影イメージリアライズ》でいいね?


下げ友:どんどん《†ブレインウォッシュ》するぜー!


時間をかける少女:じゃなくて! 傷を治すの! 私の!





 そんな感じでいよいよ全員の『特性能力』が決まった。ついでに役割も。


 時間をかける少女がPC①で《風候操作ウェザーキャスト》。

 腹黒演劇乙女がPC②で《電磁操作エレクトロニックダンス》。

 寝落ちリア充がPC③で《光波干渉オプティカルインタフェア》。

 下げ友がPC④で《精神投影イメージリアライズ》。


 「やってみないとわからない」とは言うものの、何か、『特性能力』の名前だけでもどんな感じか勝手に想像が膨らむ。


 いいね! 《精神投影イメージリアライズ》!

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