第24話 ミス
次の日、ユウキとミライは早速クラブパッシングの練習を始めた。ミライがアカリに
「やり方を教えて」
と頼むと、クラブの回し方や軌道と、まずは頭の中を整理させてくれた。相変わらず教え方がうまいな。しかしイメージは出来るようになったが、体は頭の中でイメージのようには動かず、何度も何度も失敗した。お互い真剣だったのでミライとの練習は楽しかった。その後、ユナがユウキと一緒に買いに行った藍色のディアボロを見せながら、
「ねぇ、あたしと一緒に練習しよ」
と誘ってきた。みんな何かを察したように一斉に二人に注目した。しかしユウキは気にせずにユナに教え始めた。すると、いつも適当に練習しているユナが、周りの目を気にせず、額に汗をかきながら必死に練習した。ユウキはそんなユナを姿を見て、教えたくてしょうがない気持ちになった。
「ありがとう……また教えてね……」
いつも気の強いユナが自分の気持ちを抑えきれず少し恥ずかしそうに言ったが、無頓着なユウキはそんなことには一切気づかなかった。
「うん。いつでも言ってきて」
ユウキの優しい言葉にユナは照れる気持ちを必死に隠そうとした。
家に帰ってからユウキは公園でマシーンとクラブパッシングの練習をした。幸いマシーンは、六クラブパッシングまではできるようプログラムされていた。そこで家では、六クラブパッシングの練習をした。ただでさえ難しいのに、正確に投げないとマシーンはとってくれない。投げる練習を何度も何度も繰り返した。
「今日はこのぐらいにしておこう」
額から吹き出てきた汗を拭きながら練習を終えた。サークルではアカリの指導もあり、二週間でミライと三クラブパッシングが出来るようになった。そこで、六クラブパッシングに練習に切り替えた。上手くいかないとは思っていたが、ユウキの投げるクラブが正確だったせいか、何回か続いた。
「すごい。投げるの上手ね。ちょっとやってみない?」
とアカリがうれしそうに言ってきた。
「えっ、いっいいよ」
ユウキはびっくりしたが、心の中でやった、と思った。いよいよ、アカリと一緒に練習できる。心拍音が自然と早くなった。二人は適度な距離をとり、アカリの掛け声とともに、パッシングを始めた。一本、二本、三本と投げてはキャッチを繰り返したが、。五本目で
「カシャーン」
ユウキはクラブを落としてしまった。速い……、一瞬で頭が真っ白になり、自信を失った。あのロボットではパッシングの練習は出来るが、スピードの調整まではできない。ロボットの限界を感じだした。しかし、逃げるわけにはいかない。その後も、ミライとクラブパッシングの練習をした。まだまだ思うようには出来なかった。アカリとの差は大きいが、いつか追いつきたい。そう決意した。
家に着くとすぐさま妹のサキにロボットを改良してほしいと頼んだ。サキは母ちゃんに似てロボットに詳しい。サークルで撮影したすべての技が出来るようにしてほしいと頼んだ。もちろんあの十クラブパッシングもだ。サキは、きっと父ちゃんも母ちゃんにこのように頼んだんだな、と思いながら、
「改良だと完成するまでロボットが使えないから新しいのを作るね」
と快く引き受けてくれた。サキのやる気にスイッチが入り、この日以来毎日DVDを見て、クラブの軌道の計算、手の動かし方、投げる位置、スピードを事細かにノートに書き込み、ロボットの作成に取り掛かった。それは、まるで、十数年前の母ちゃんと同じ姿のようだった。
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