第22話 団体演技
こんな風にミライと話すのは初めてだった。ミライはユウキの気持ちを見透かすかのように話をしてくれた。ミライは人の気持ちを察するのが上手だ。だから、最終的にユウキのやりたいことができるように話をもってってくれる。ミライと話をして気持ちが楽になった。線香花火の火玉がポトリと落ち、次の花火を取りにいこうとしたら、ユナがおもむろに話しかけてきた。
「ユウキはディアボロが上手ね」
「そう? ありがとう」
「ユナも一芸コンテストでがんばってたよ。まだ経験が浅いからすごい演技は無理だけど、練習すればきっとうまくなるよ」
「ありがとう。合宿が終わったらディアボロ買いたいな。ねぇユウキ、一緒に買いに行かない?」
ユナはさばさばとした口調で言ったが、ユウキは
「ミライとクラブを買いに行く約束もしているから三人で買いに行こう」
と戸惑いながら答えた。
「……うん、いいよ」
少し考えながらユナは答えたが、面白い子ねと心の中で笑っていた。
合宿三日目。今日はグループに分かれてパフォーマンスを披露する日だ。三十分程練習した後パフォーマンスが始まる。アカリはユウキたちに、ボールをキャッチするときは指の付け根付近でキャッチするように教えてくれた。これだけで安定感が増すから、そうアドバイスをしてくれた。まずはリョウ率いる大阪城南高校三年生五人によるパフォーマンスだ。リョウはメンバーの長所を巧みに操った。団体では個人ではできない技がある。五人でディアボロ十二個を回したり、たくさんのボールを操ったりと見ているだけでワクワクした。次はいよいよユウキたちの番だ。アカリは
「今日は初めてみんなでユニフォームを着ての演技よ。みんな笑顔で楽しもう」
そう言ってみんなを励ました。失敗してもいい、とにかく笑顔だ。みんなで黒色のユニフォームを着て演技するのは、初めてだった。それだけでも、初舞台のころからは成長したと思えた。まずはボールの演技からだ。アカリの言う通り、ボールを指の付け根付近でキャッチできると、今日はうまくいく、そんな安心感が出てきた。みんなと一緒にジャグリングするのがこんなに楽しいとは思わなかった。演技が終了するとみんな笑顔でハイタッチをした。コハル、ハルト、ソラ、ユナ、ミライそしてアカリ、このサークルは最高だ。思い起こせばアカリはみんなでジャグリングをするときはいつも楽しそうにしている。アカリがみんなと一緒にジャグリングするのは、これなのか、心の中でそう考えた。アカリの存在が何倍も大きく感じた、そんな印象を持ったまま合宿は終わった。
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