第20話 10クラブパッシング

「えっ?」

と思っているうちに二人の準備が整い、拍手が止まった。みんなが息をひそめた。異様な空気だけが流れた。いよいよ始まる。みんなの視線がリョウとアカリに集まった。

「三、二、一ハイ」

リョウとアカリはそれぞれ、五本のクラブでカスケードを始めた。リョウは足でユカをパンパンとたたき、アカリとリズムを合わせた。初めて見る光景に神戸山手高校のメンバーは口をポカンと開けて見とれていた。

「三,二,一、ハイ」

リョウの掛け声とともに二人はクラブを一本一本投げあい始めた。黒い服にシルバーのクラブ一本一本が綺麗な軌道を描き、シャープな感じだった。すごい、初めて間近で見る風景に声も出ない状態になった。そしてクラブが自らリョウの手に吸い込まれるように見えたかと思うと、一本二本と脇にはさみ、最後の一本をガッチリとキャッチした。完璧に決まった。大きな拍手と歓声が沸いた。この二人は全く次元が違う。アカリってこんなすごかったんだ……。ずっと一緒に練習していたアカリが遠い存在に感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る