第18話 リョウ
合宿当日、学校に集合し、顧問の先生に引率され、バスで合宿先まで向かった。バスの中で去年の合宿のDVDを見た。みんなレベルの高い大阪城南高校の演技を静かに見ていた。なかでも一人だけ特別に上手な男の人がいることに誰もが気づいた。宿舎に付き、両顧問の先生より挨拶があり、両校の自己紹介をした後、早速みんな練習を始めた。シホから大阪城南高校三年のリョウをしっかり見ておくように言われた。バスで見た男の人だ。リョウはジャグリングの神様と言われるほど、上手だった。なんと、日本ジャグリング協会が主催するジャパンジャグリングフェスティバルチャンピオンシップで優勝しているという雲の上の存在だった。合宿では彼は自分の練習より、教えるほうに力を入れていた。一人ひとりに声をかけ、少しずつ教えていた。ユウキも三ディアボロを教えてもらった。
「君、上手だね。手首の使い方がいい」
そう言われたユウキは、まさか褒められるなんてと思い、ギクシャクして何も言い返すことができなかった。ていうか父ちゃんと同じようなことを言ってたな、とリョウを見ながら心の中で思った。そんな時、ユナがおもむろに話しかけてきた。
「あたしにもディアボロ教えてくれない? アカリが入部したときみんなでしたでしょ。あれがすごく楽しかったの」
あの、みんなでパスをしあったのだな。
「じゃあ二人でパス交換しようか」
「うん」
ユウキはやり方を教えてあげてパス交換を始めた。しかしユナはすぐに落としたり、投げるときの力の入れ加減がちぐはぐで不安定だった。ユナはわざとミスをしていたが、そんなことにユウキは気づかず一から丁寧に教えてあげた。面白い子ね、ユナは心の中で笑ってた。
「ユウキはディアボロが上手ね」
「そう、ありがとう」
「明日の一芸コンテストもやっぱり、ディアボロをするの?」
「うん、そのつもりだけど、ユナはどうするの?」
「迷っている、全員参加って厳しいよね」
「失敗しても誰も責めたりしないから、大丈夫だよ」
「そうね、ありがとう。また教えてね」
ユナはさばさばして調子でそう言って、ミライたちとボールの練習を始めた。ユウキは普段はあまり話をしないユナが話しかけてきて、しかもディアボロを教えてほしいなんて言ってきたことに不思議に思ったが、ディアボロに興味を持ってくれたことを喜んだ。しかし、ユナにディアボロを勧めることができず後悔もした。そうしているうちに午後の練習が終わり、夕食を食べた。
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