第15話 クラブパッシング
「あっ」
慌てたミライは
「ごめんなさい」
と謝り、すぐに落ちたボールを拾った。しかし、おばあちゃん達は笑顔で
「がんぱって」
と優しく声をかけてくれた。最後までやりとおさなきゃ、ミライは無我夢中だった。技はしっかりと練習して自信があったが、一つの技から別の技に持っていく練習はあまりしていなかった。他の三人も同じだったため、何度かミスがあった。しかし、ミスをしても一生懸命に演技を続けた。曲線を描くボールを直線的に動かすロボットなど練習した技は決まり、無事演技は終了したが、何が何だか分からない状態だった。おばあちゃん達が拍手をしていたが、一刻も早くに舞台から去って行った。
舞台裏では一人、上を向きながら心臓をバンバンと叩き、緊張を拭い去ろうとしているアカリに
ミライは
「ごめん。緊張しちゃって……」
と申し訳なさそうに謝ったが、アカリは
「ジャグリングで大事なのはお客さんを喜ばせること、成功するか失敗するかは二の次よ。それにまだ始めて三か月でしょ。あれだけできたら十分よ、おばあちゃん達も喜んでいたでしょ」
そう自分に言い聞かせるように言った。アカリの目に余裕の表情が見えたミライは、アカリの緊張が少しおさまったと感じた。そして、いよいよ次はアカリの番だ。もう大丈夫ね……ミライはそう察した。舞台裏でユウキはアカリの演技を見たかったなと思ったが、アカリの演技が始まったら、大きな拍手が起きたため、やっぱりうまいんだなと今更ながら思った。ミライの予想どおり緊張もとれたアカリは、クラブを自由自在に操り、おばあちゃん達を釘づけにした。
「アカリちゃんよかったよ」
今日一番の拍手が起こった。そして最後はアカリとソラがクラブを投げ合うクラブパッシングだ。ソラはまだ緊張しているみたいだったが、アカリはソラのレベルに合わせ優しくパッシングをした。そのおかげで、ミスなく終えた。よし、アカリはニヤッと笑みをこぼした。
「パチッパチッパチッパチッ」
大きな拍手に包まれ、アカリ達は舞台を後にした。
全員の演技が終わったあと、シホからメンバー全員で舞台に立ち、挨拶をするように言われた。大きな拍手が鳴りやまなかった。初舞台は大成功に終わり、みんなホッとした様子で、提案したアカリは大喜びだった。また、初舞台が始まる時の不安そうな表情から、みんな自分の課題も見つけ、ますますがやる気が出てきた様子で誇らしげな顔だった。流石ねアカリ……、シホはますますアカリのことを気に入った。
クラブパッシングか……、ユウキは心の中でつぶやいた。
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