第11話 練習
ユウキはサークルで毎日ディアボロの練習をした。父ちゃんの得意な道具とは思いたくなかったため、大道芸人がするのを見て一番楽しかったと思い込むことにしていたためだ。しかしディアボロで重要なのは派手な技ではなく、回転の速さを上げる練習や、スティックを使ってディアボロの方向を変えたりと見た目とは裏腹に地味な練習だ。ディアボロを豪快に振り回すサンのような派手な技をするには、安定感が必要で回転を早くすることが、最も近道と知っていた。また、ディアボロは手首を使うことを知っていたユウキは、先輩の手首ばかり見ていた。スピード、角度。ただ力の入れ具合だけは分からなかった。たった二百八十グラムのディアボロなのに意外と重たいんだな、改めて、そう実感した。そして家に帰ってからは、ロボットを見てイメージトレーニング。完璧な見本という意味で、ロボットは非常に役に立った。また、力が入っているかどうかは、ギギィという音の大きさで分かった。おかげで誰よりも早く上達した。一方、初心者だったミライ達もアカリの指導を受け、三ボールの最も基礎となるカスケードという技を練習をしていた。
「ボールは正確に投げることが出来れば、キャッチの部分が少々乱れても持ち直すことができるため何とかなるわ」
アカリは技術よりも上手くいくときのコツを教えてあげていた。
「次はボールを投げる位置を意識してね。カスケードは右手に青と黄色のボールを左手に赤のボールを持って。右手で青のボールを投げたら、左手でキャッチする前に赤のボールを投げ上げ青のボールをキャッチする。赤のボールが落ちてくる前に右手で黄色のボールを投げ上げ、赤のボールを右手でキャッチするの。これをできるだけ多く繰り返すの。ミスをしたら、どうしてミスしたか考え、どうすれば上手くいくかを意識して練習してね」
そう上手くいくときのイメージを植え付けるアカリのアドバイスに、初めは四回ボールを投げたら落としていたが、五回、六回と一つずつ回数が増えていった。
「いい、みんな、落ち着いて。ボールは三つあるけど、手が二本あるから、宙に浮いているボールは一つだけよ」
そう言って焦る一年生を落ち着かせた。
おかげで、新入生の上達には目を見張るものがあった。こんな調子で一か月が過ぎようとした。
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