第9話 新入部員

 次の日、新入生七名の紹介があった。経験者はアカリ、ソラ、そしてユウキの三人だ。注目はなんといってもアカリだ。入学式でのパフォーマンスが脳に焼き付いているからだ。ソラは色黒で背が高くガッチリとした体形で、中学時代に一年間だけボールとクラブをしてたらしい。初心者は小柄でおとなしい感じのハルト、アカリの親友でかわいらしいミライ、気が強く短髪でボーイッシュなユナ、今どきって感じの茶髪でオシャレなコハルの四人だ。新入生七人を迎えサークルの雰囲気はガラッと変わり活気が出てきた。すかさずシホが

「みんな好きな道具を持って練習しようか」

とみんなに指示を出した。

「はい」

今までのサークルでは聞いたこともないような元気な声が返ってきた。

ソラはクラブ、四人の初心者コハル、ハルト、ユナとミライは、ジャグリングの基本となるボールを、そしてユウキはディアボロだ。アカリはミライ達四人にボールを教えてあげていた。ユウキは先輩にディアボロを教えてもらいながら練習した。みんな

「アッ」

とか、隣の人にボールをぶつけたりとか、ジャグリングの腕は初心者丸出しであったが、必死で練習している、みんなの熱が伝わってきた。

みんなの興奮が少し冷めてきた頃、

「ねぇみんな」

アカリは一年生を呼び止めた。

「全員でディアボロをしよう。スティックを持って一列に並んで順番にパスするの。みんな並んで。まずは軽く練習よ。ディアボロをキャッチするときは両手を広げて紐をピンと伸ばし、ディアボロのくびれの部分をめがけてキャッチするの。そして投げるときは若干右手を高く左手を低くして両手を広げ紐をピンと引っ張るの。そうすると左の人にパスが出来るわ。一番端にいるユウキは思い切り右側の私をめがけて投げてみて。その時は左手を高く、右手を低くしてね。じゃあみんな少し練習してみて。ディアボロは初心者でも簡単な技ができるから大丈夫よ」

みんな戸惑いながらも言われた通りに練習を始めた。初めてディアボロを回す人もいたが、なんとなく感じをつかんだ頃、アカリは赤いディアボロに高速回転をつけながら

「いい、みんな準備できた? 一列に並んで。三、二、一ハイの掛け声でパス出すよ」

みんな、これからどうなるのか予想もできないままアカリの言う通りにした。

「三、二、一ハイ」

というアカリの掛け声と共に隣にいるミライにパスをした。ミライはすぐにハルトへ、ハルトは少し高めに上げてコハルへ、コハルはミスしたくない一心でソラへ、ソラは余裕をもって、ユナへと危なげなくディアボロが渡った。ユナは投げるような感じでパスをし、何とか最後のユウキまでディアボロが渡ってきて、一番端のアカリに大きくパスをした。頭の上をきれいな弧を描いて飛んでいく赤いディアボロを、みんなが目で追った。そのディアボロがアカリのステッックにスポリと納まった瞬間、

「できたー」

大きな歓声を上げ、みんなアカリの傍に駆け寄ってで喜んだ。初心者の四人も自分でも出来たことに喜んだ。アカリは自らの技を磨くだけでなく、ミライ達初心者の面倒を見てあげたため、サークルの雰囲気もよく、楽しく練習することができた。ユウキはこのサークルを心から好きだ、そう思えた。その姿を見たシホは今年の新入生は期待できるわね、そう思った。

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