第5話 決意

 ユウキが家に帰ると、母ちゃんが高校入学業祝いにとプレゼントをくれた。それは人間の形をした、百センチメートルぐらいのロボットだった。母ちゃんは、技術者で、よくロボットや機械を作っていたので、その一つだろうと思っていた。気にしまいと思うも、なぜかそのロボットが気になり、どんな機能があるのか母ちゃんに聞いてみた。すると、このロボットは母ちゃんの作ったジャグリング練習ロボットで、父ちゃんがお手本として愛用していたことを告げられた。しかも四代目だそうだ。ボールやクラブを正確に行う、しかもタブレットから通信することで、技の指定までできる優れたロボットだった。試しに三ボールの最も基本となる技、カスケードをタブレットで選択し送信した。するとロボットは完璧なまでのカスケードを行った。ボールを投げる位置、キャッチの仕方、始めは機械だから当たり前かと思ったが、もし、投げる位置が少しずれるだけでもボールは落ちるだろうな、そう思った。このロボットは五ボール、五クラブ、二ディアボロの技をこなすことができた。父ちゃんは、これを使って練習していたのだ。ロボットの手首は非常に柔らかかった。ディアボロでは手首をよく使うからだと一瞬で判断できた。そのことは父ちゃんによく教えてもらっていたからだ。

 ユウキは、母ちゃんがユウキにジャグリングをしてほしいのだと悟った。中学時代特にこれといったこともせず三年間過ごしたこともあり、母親としては何もせずにはいられなかったはずだ。しかし、小さい頃を思い出すと、失敗しては怒られる日々ばかりで、どうしてもジャグリングを好きになれなかった。だが、技ができるようになった時の喜びは、今までの努力が実る瞬間ともいえ格別なものだった。どうしよう…… 心が揺れた。どうせ他にやりたいこともないし、父ちゃんも仕事で長年会ってないし、三年間何もせず過ごしても意味がないなと色々考えた。

 しかし、迷う時間がもったいない。やるだけやってダメならあきらめよう。このロボットなら失敗しても怒られない。それにあの子もいるし……、ユウキは心の隅にジャグリングをしたいというかすかな気持ちに気づいたのか、ジャグリングサークルに入部することを決意した。

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