ひと昔前の話をしようか

ひと昔前の話をしようか。

なに、そんなに珍しい話というわけではないよ。簡単な話さ。

わたしが高校三年生だった頃の冬あたりかな。変な夢を見るようになったんだ。

まっくらな空間で、自分の手の中に金属バットみたいなものがあって、目の前にいる人間の頭のようなものにガンガン振り下ろしてる夢。

人の頭に金属バットを本気で振り下ろしてるんだから、そりゃあもう周りは凄いことになっていた。まるでスイカ割りをした後みたいな状況だったよ。

血は周囲一面池ができるんじゃないかってくらい、それこそありえないくらい出てたね。

転がってきた眼球を踏み潰して、脳漿をぶちまけてる脳みその残骸を黙々と殴り続けるの。

1回目にその夢を見たときは「変な夢を見るもんだなぁ」と思ったよね。でも、その夢はそこから1週間くらい、連日連夜、休みなく現れたの。

1日経つごとに、転がってる人間は増えていって、ほんとに血の池地獄を見た気分になった。

本来なら不快感を催すような描写だったのに、不思議と安心感を得たのが印象的だ。

ゴロゴロ積み重なるたくさんの死体。もちろん頭はない。潰れちゃってるからね。そこらへん血だらけ、脳みそだらけ、だらけ祭りの様相を呈していたよ。

今でもその様子はフラッシュバックすることがあるんだけど、どうしてそんな夢を見たのかはよく分からない。友達には、相談できなかったなぁ。変なやつって思われたくなかったし。

勝手な解釈だけど、受験も近かったし、ストレスの解消をしてたのかもしれない。夢で何かを殺すと、問題の解決を意味するとか言うじゃん?多分それだと思う。ほんとのとこはわかんないけど。

どう?誰でも1度は見る、なんてことない夢でしょう?わたしがおかしいわけじゃないよね。誰だって見るはずだし。言い出せないだけで見てるだろうし。

ひと昔前の話をしようと思ったのには訳があってね。また同じような夢をみるようになったんだぁ。

血の池に沈むのも、たまには悪くないかもね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思春期のわたし 市伍 鳥助 @kazuki0405

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る