第97話 梅雨の合間のパラドクス


 晴れ渡った青空とギラギラの太陽

 昨日までの大雨が嘘みたい

 

 でも まだ夏じゃないの

 これは 梅雨の合間


 ユラユラと街を揺らす陽炎かげろう

 立ち昇る蒸気にジワリとにじむ汗


 ボクは梅雨の合間がキライ

 幼馴染おさななじみのアイツに似ているから


 はっきり言って アイツはモテる

 いつも隣には女の子がいる


 喧嘩をしたと泣きついて来たことがある

 次の日 よりが戻っていた


 振られたと泣きついて来たことがある

 次の日 新しいが隣にいた


 プレゼントを選んで欲しいと言われたことがある

 次の日 相手のが感動していた


 ボクは梅雨の合間みたいなもの

 出番は雨が止んだ一瞬だけ

 

 いいように使われているのはわかっている

 でも 止められないの

 

 アイツの顔が忘れられないから

 ボクだけに見せる 悲しそうな顔が

 

 梅雨の合間を喜ぶ人は多い

 でも 梅雨が明けたら存在は忘れられる


 青い空とギラギラの太陽

 それは どちらも偽物の夏


 でも いいの

 

 偽物だって役に立つんだから

 誰かのために輝けるんだから


 

 RAY

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