第101話 休日のエトランゼ

 étrangerエトランゼ――仏語で外国人や見知らぬ人を意味する言葉


 外国へ行けば ボクは文字通りの外国人エトランゼ

 ボクから見れば 現地の人は見知らぬ人エトランゼ


 でも 外国にいるときだけじゃない

 周りが日本人ばかりでもエトランゼになることはある


 人であふれ返る 都心のスクランブル交差点

 慌ただしく行き交う車が途切れることはない


 特別でも何でもない 休日の見慣れた風景

 なのに 初めて訪れた異国の街みたい


 歩行者信号が赤から青に変わる

 マラソンのスタート地点みたいに人の波が一斉に動き出す


 そんな人波に流されながら戸惑いを隠せないボクがいる

 何かが足りないせいで違和感を感じている


 それが何なのかはわからない

 ただ 心にポッカリと穴が空いているみたい


 見慣れた景色の中で抱く 疎外感

 たくさんの人の中で覚える 孤独感


 感じたことのない不安が湧き上がる

 奇妙な感覚にさいまれるボクは差し詰めエトランゼ


 青色の歩行者信号が点滅を始める

 速足になって対面の歩道に息せき切って辿り着いた


「ギリギリセーフだったね」


 いつものように笑顔を浮かべて隣りに目をやる

 でも そこにキミの姿はなかった


 違和感の正体がわかった

 足りないものが何なのかを理解した


 初めて訪れた異国の街

 耳障りな喧騒が降り注ぐ中 エトランゼは歩き始める


 目的ゴールがあるわけじゃない

 記憶の中の道筋ルートを辿っているだけ


 隣りに存在した笑顔を思い浮かべながら



 RAY

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