コトバノチカラ
しまなみ海道を走る。
その夢が実現し、その時何を思うのか。自分でも興味がありました。
そして、実際夢が叶って感じたことは、『生きてて良かった 生まれてきて良かった』とか、ココロの底から湧き上がる喜びを爆発させるというものでもなく、
『夢中』
この一言でした。
その時、「日本語とは、かくも的確に状況を言い表す力を持った言語なんだな」と驚きました。
一心不乱、ロードバイクのペダルを漕ぎ、しまなみ海道の島々を渡りながら、この言葉の本当の意味を理解した瞬間、普段いかに日本語の意味を適当に受け取っているかも考えました。
夢中という言葉は、今までの自分の中で夢が叶うという状況と関連するとは、思ってもいませんでした。
『夢中で走った』『夢中だったので、そこまで気が回らなかった』とか、夢中はどちらかというと頑張っている状態、がむしゃらに突き進む、夢が叶う前の状態を表している感じを受けていました。
今とは、どこを基準にして今なのか?
今と思った瞬間、その時間はすでに過去になっている。
哲学的な意味をも含め、『夢が叶う』 = 『夢中』 と表現しているのだと実感した時、日本語とはいかに厳密に状況を表現し、その言葉の持つ力がいかに的確かを改めて感じ入りました。
もし、作品を作り出版する夢を叶えたいと願うなら、『夢中に書く』ということが一番の近道なんだと、理解した瞬間でもあります。
小説を書く技術や、キャラクターや、物語の構成や、そういう技術的なことも大切ですが、『自分の思い描いた物語の終わりを目指して夢中で書く』この一点が現状を打破する『書き上げる』というゴールに向かう一番の方法なんだと。
夢中だからこそ、夢が叶うという逆説でもあります。
そして、この『夢中』の上に無我がついたら……
悟りが開けそうです。
慶風随想帖 慶風 @yoshikaze
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