花のテロリスト

深夜太陽男【シンヤラーメン】

第1話

 彼はテロリストであった。花の種を包んだ土団子を街中至るところに投げるのだ。テロ行為と呼ぶには優しく、慈善行為と呼ぶにはやや迷惑な話である。

 理想の世界、目指すべきものがあるとして、僕らは何ができるか。政治家になれたら、大企業の社長になれたら、親になれたら、大人になれたら、人間になれたら。世界を変えてやるだなんて大層な言い方をしてしまう。でもそれは、些細な毎日の世界の営みを積み重ねていくだけであった。

 彼の活動は生涯続けられた。誰も知らない中、彼は種を飛ばし続けた。

「この景色にな、面白いものが出てきたら、そりゃめっちゃ面白いやん」

 ビルの屋上、都会の中心、海岸沿い、湖、野球グラウンド、街の至るところで。


 花は咲く。


 彼は知らないかもしれない。一瞬かもしれないこの景色に、胸をうたれて涙する人間がいるんだと。役に立たなくても、芸術はそこに有り続けて欲しいと切に願う。

 彼の作った世界は消えていく。それでも僕は、忘れずに生きていくのだ。

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花のテロリスト 深夜太陽男【シンヤラーメン】 @anroku

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