非日常のはじまり

ころころと車いすに乗って案内されたのはナースセンターから離れた6床の部屋で、入口が廊下側にあり手前左側に共用の洗面台・個人ロッカー右側にトイレがあった。ベッドは左右とも3つづつ並び足側を中央に向けてあり、最奥は大きな窓があった。が、入った瞬間妙に暗い。

先客が2人最奥の左右窓側にいた。とはいうもののベッドをくるりと囲むカーテンによって顔は見えず。光が透りはするもののそりゃ暗いわな。最近はプライバシーを大事にする風潮だから体を起こしていても常にカーテン引いて視界を区切るのがマナーらしいね。ここでは。

看護師さんが「今度切迫で入院されるかぼちゃさんです~よろしくおねがいします~」と紹介してくれた。わーいコミュ障にやさしい仕様、挨拶しやすいっ。すかさず「よろしくお願いします」とフォーマルな声色でご挨拶。すると、カーテンの向こうから声はした。あ、若い声。

「ここにいる人皆切迫で入院の人たちだから、よろしくね」

あ、即私の情報共有したのはそういうわけか。

「じゃあ入院の案内させていただきます、その後トイレ行ったら安静にしてください。先生からこの部屋のみ移動OKの指示だから基本横になっててねー」

「……それはトイレと歯磨き以外動けないという意味合いですか」

「そうだねー。お風呂行きたいだろうけど出血止まったらかな」

うっわあ早くも絶望が脳内をかすめていったんですけどー(前日も寝ていて入浴していなかった)まあ大人なのでおくびにも出しませんけどー。

「次の診察は来週だから」

……はいわかりました。ああ日常が指の間をすりぬけていく。

ちなみに移動距離を少しでも短いようにと、指定されたベッドは入口にもっとも近い所でした、辛うじてトイレの真横は避けられたよ(泣)!

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