入院始め!
「かぼちゃさん、これは入院ですね。」
予約なしでかかりつけの産科に向かい、診察を受けた私は予想通りの担当医の言葉を平然とした面持ちで聞いていた。まあネットで調べれば困りごとのたいていの部分は解決のしっぽがつかまえられる時代だから予習の成果がでたと言えるのでしょう。だって妊娠初期ならともかく2?週の中途半端な時期に出血なんてほっといて治るとは思わない。第一私は不妊治療経験者だから下からの出血には人一倍厳しいんだ。
「前々から体つらいって言われてましたしね、まあ安静にするしかないから腹をくくって休んでください。」
はーいと良心的な模範的な患者の皮をかぶって返事する。穏やかに、ちょっとスローに理性的すぎない反応で返すのがたぶん印象がよいと思いながら。長い付き合いになる相手に悪い印象をもたれないほうが良さげだし。看護師が病棟から派遣されて案内されながら移動する。車いすだ。ああ病人として扱われるってことだなあと今更ながら実感する。
「これに乗って病棟まで移動しますね、ゆっくりで構いませんから、転ばないように腰かけてくださいねー。」
看護師さんは若いながらもベテランの風格があって、言葉遣いにも配慮がなされていて、でも動作は素早くて病人妊婦とは真逆の存在だった。ていうか車いす速いですね押すの。シートベルトするわけでもなし早いとけっこう恐ろしい乗り物だなあと思いつつ、病室に着く。途中エレベーターの譲り合い攻防にあったり(老人は常に自らが優先されると思っている人種が一定数いる)廊下の譲り合い攻防にあったり(掃除の業者さんのワゴンVS車いすは狭い廊下ですれ違いに苦労するあるある光景。加えて点滴を自前で持つ人が来るともうにらみ合い。動けない)しながら、まずはこの環境下であえて笑える要素探しをしようと思いつく。だってどうせ泣くだろうしね、この後。
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