レポート26 むず痒い
文化祭燃え尽き症候群が発生している人間がいる中、俺は今日も今日とて学校に登校している水曜日。
グリプスもちょいちょいログインしてるけど、ジュジュのイベントが今週の土日に控えているため、素材集めに忙しいのさ。
あと若干スズネというか音原さんに避けられてる気がするんだよな。ゲーム内で。
学校ではいつもどおりだ。
文化祭が終わった後の火曜までは。
「おはよう、角秋」
「おはよう……」
「何やら厄介なことになっているようだな」
「本当にな」
火曜日の放課後に、実行委員が様々な場所でとった写真が貼りだされた。ようするにほしい写真は注文してくれというよくあるやつなのだが……その中にいろいろと問題のあるものがな。
まずは劇の写真だが俺がでているところが妙に取られていた。ていうか、3回目と思われる劇のキスシーンが角度のせいがマジでしてないかって写りになってざわつきが起きたらしい。
そしてその2だ。
音原のドレス姿はかなり好評だったらしい。それはあたりまえのことだからいい。
問題はそれに対して、一緒に文化祭を回っている時のシーンを取られていたらしく、付き合ってる疑惑が付きまとってしまったのだ。
それだけならまだいいが、相手の俺が暗さMAXなせいで、クラス内はほぼいないがその他から「趣味が悪い」とか「若干浮いてる気はするよね。部活だって、正式な部活じゃないんでしょ」みたいなあら探しに近くはあるが、ねちっこい悪評が回り始めてしまっている。
その上、音原が付き合ってるか聞かれたりしても濁して答えるから悪化してるとかなんとか文丸さんから聞いた。
普通に断言で拒否されたらそりゃへこむけど、この状況でその答え方は悪手だってわからないのだろうか。
「北谷。解決法はないのか」
「僕を友達と認めることだ!」
「…………」
「な、なんだ、その顔は」
いや、なんかわけわからないと思いながらも、自分で今気づいた。自然とこいつのことを――
「いや、すまん……普通に友達だと思い始めてた」
「角秋ぃぃぃ!! マイ、ソウルフレンド!!」
「落ち着け! それで、解決法があるのか?」
「まあ、ここで話すのもあれだから、昼休みにな」
「おう」
始業のチャイムがなって、授業が始まる。その間は普通に進んでいく。音原さんはいつもどおりに見える。
昼休みになった。
北谷と普段は使うことなどない食堂へといった。まあ、数回は使ったことがあるから食券が買えないなんてことはなくカレーうどんを買った。
「それで、解決方法って?」
「まあ、ふたつかみっつほど思いついている」
お互い割り箸を割って話を続ける。
「たとえば?」
「簡単なことはおまえか音原がきっぱりと拒否というか否定することだろうな」
「俺は……一応、否定したじゃねえか」
「人気の全ては音原のほうにいっている……からぁぁぁい!!」
「じゃあ、その他には」
「ひっひ……まあ、まじめに言えば日角が変わることもひとつの方法だ」
「俺が?」
「おまえの暗いイメージを払拭させれば、いいと思うのだが」
「…………まあ、そうだな」
「それに加えて、お前たちが本当に付き合いでもすれば完璧だろう。嘘を真にすればな」
「ぶっ――」
思わずカレーうどんを吹き出しそうになった。ギリギリセーフでよかった。
「ゲホッ……俺がなんで音原さんと付き合うことになるんだよ」
「好きではないのか?」
「好きだよ」
「顔赤くしながら初心だな」
「そんなこと言っておまえ誰かと付き合ってるのかよ」
「まあ、昔文丸と付き合ってた時期があったな。結局、こういう関係はあわないと別れたが」
「驚きの新事実だよ……つうか、俺が好きでも音原さんが俺のことってわけないだろ」
「そうだろうか……少なくとも、他の奴らよりは仲が良いようにみえるがな。まあ、僕が思いついたのはその程度だ」
「…………そうか。まあ、参考にする」
器を返却口に返して、帰り道。渡り廊下から中庭で1人昼食を取る、音原さんを見た。
覚悟決めてあたって砕けるべきなのかな。
その夜。
俺はグリプス・サーガ・オンラインの世界に降り立っていた。
なんかこの言い方かっこいい気がするな。これからも使ってみたい。
「俺! 降誕!」
人がいないところで最期ログアウトしたから、出来る楽しいことだな。
「…………」
「はっ!?」
知らない人に見られてた。めちゃくちゃ恥ずかしい。
その時、メールが届いた。俺は照れをごまかすようにそれを開く。
『日角くん。こっちは予定の素材が揃ったわ! 後は前に失敗したグリフォンの素材だけよ。そっちはどうかしら?』
「ゲーム内ではヒカクでいいよ。こっちも予定の者は全部集まった。っと」
メールを返すと。グリフォンのでるダンジョン入口で集合ということになった。
ゲーム出会うのは久しぶりだな。
「よ、よう」
「こ、こんばんは」
なんかぎこちなくなってしまう。
砂岩のグランドキャニオン(想像)のようなダンジョンの入り口でスズネと合流した。
グリフォンの巣まで向かう道中。ここは設定上、グリフォンの縄張りらしく他のモンスターが出てこない。
もっと上のレベルのグリフォンダンジョンになると別になるらしいが。
ただ、その何も起きないで歩いているせいで、なんとも微妙な空気になってしまう。
「こ、今回はクリアしような!」
「そ、そうね! この前みたいにはいかないわ!」
「…………」
「…………」
会話が続かない。今までどうやって話してたんだっけ。
「あ、あのね。学校でのことなんだけど、今話しても大丈夫……かしら?」
「い、いいと思うぞ。どうせ、俺達しかいないし」
そういう設定でダンジョンに入ったし。
「最近、その噂とか立っちゃってて、ごめんなさいね」
「いや、別に俺は気にしてないからいいけど」
「そ、そう……そういえば、日角くんは、その、そういうのは否定したのよね?」
「ま、まあ、迷惑かけたくなかったから。否定はしたけど、あんまり意味は無いみたいだったし」
「そうよね……あと、あと……そ、そういえば、日角くんの王子様の写真、かなり人気らしいわよ!」
「そ、そうなのか? あんまり気にしてないから知らなかった」
「えっと、あっと、あの、あと……うぅん、もう、どうしよう」
俺もどうしようって気持ちです。
そんなことしているうちに、グリフォンの巣にたどり着いた。
前と同じように卵や羽が落ちていて、アイテムとして拾えるようになっている。
「あぁ~! もう、わかんないわよ!! こんなの初めてなんだから!」
突然、怒りだしてしまった。
「えっと、大丈夫?」
「問題無いわよ!」
うぅ、もうどうすればいいんだよ。
「だいたい、少しくらいは気づいてくれてもいいじゃない……いや、でも、そんなの私の我儘だし、というか私だって確信はもててなくて、これがそういうことなのかわからないし」
落ち着いてからにしたほうが良さそうだな。
俺は一応、逃げるために動きやすい装備に変える。とりあえずモールは当たるわけねえしアイテムインベントリに閉まっておこう。それで盾は……たまに役立つから腕につけておく。
ちなみに上位職にはまだ上がってないが、素材集めの中で互いに50レベルほどまで上がってしまっていた。イベントに終わったらジュジュも一緒にあげようという話をしていたからである。
「ほら、ヒカク。行くわよー!」
「えっ? あっ、おう」
音原さん――というより、この状況だとスズネってよんだほうがしっくりきそうなきがする。
乱暴に地面に落ちていたアイテムを回収する。
すると巣の上に開いていた大穴からグリフォンが降り立ち、咆哮を上げた。
俺とスズネは体をひるがえして、ダンジョン入口へと走りだした。鬼ごっこのスタートである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます